Facebook 2025/9/9 より転載(一部加筆)
9月7日の東北大学のウナギシンポジウム、遠隔傍聴したが、なかなか面白かった。特に、アジアの研究者がCITES掲載に否定的なコメントを出していたのが興味深かった。研究者間のネットワークを大事にすることは貴重だ。当日も書き込んだが、なぜ、保全策が効果を上げつつあるかもしれない今になって附属書掲載を提案したのかはよくわからない。Tanaka(2025)でも半世紀前よりかなり減っていることは示されている。問題は2010年以後も激減し続けているか、下げ止まっているかだろう。
Kaifuら(2025)のシラスのデータはCPUEの年変化が示されていないが、その平均値とSEを見る限り、少なくとも3世代8割(や99%)で減り続けているとは考えにくい。
また、CITESに載せることは、日本が主要な消費国だとすれば、国内産業と中台産業の格差を増す懸念があるかもしれない(EUは掲載後も域内取引可能)。とてもよい研究者ネットワークができていると思いました。
ウナギ論争コメント(毎日新聞2025/10/29記事も参照)
- Kaifu et al.(2025)さんのTanaka(2014,2025)論文批判は主に以下の3点があります。
- シラスウナギは未報告や過剰報告が含まれたデータのCPUEである
- ウナギ専業と混獲の情報が混在し努力量がウナギだけでない
- 放流を含めた漁獲量は資源量を反映しているとは言えない
- ただし、Tanaka(2025) は、未報告がある場合などを想定して感度分析しています(図6b)。
- 他方、Tanaka(2025のP8左欄図7の下)はKaifu and Yokouchi 2019について、これらのデータは、資源状況の代表性を確保するためのサンプリング計画が存在せず、調査規模が小さすぎて代表性が得られないと批判しています。
- これらの批判自体はどちらにも(Kaifu et al.2025への批判としても)成立します。不完全な情報をもとに評価しているのですから、やむを得ません。
- Tanaka(2025)に対する批判について、問題は、それらが補正できた場合に、資源評価が定性的にどちらに変わるかでしょう。未報告率が昔も今も一定程度なら、絶対資源量がむしろ多くなる(Tanaka図6b)。未報告率が昔の方がずっと多かったとすれば、資源回復したとは限らないでしょう(ただし、激減し続けているかは疑問です)。(2)ウナギ漁業に対する依存度が近年のほうが少ないとすれば、全努力量をCPUEの分母に使うことは、むしろ資源の回復率を過小評価していることになるでしょう。近年の方が依存度が高ければ逆になるでしょう。(3)シラスウナギの採捕率が現在の方が低いとすれば、放流を含めた解析が真の減少率の過小評価になるとは限らないでしょう。現在の方が高ければ逆でしょう。
- Kaifuらが非公開情報を使っていること自体は、私は構わないと思いますが、匿名性を維持するために、漁獲量が示されていない。残念ながら回帰モデルの追試ができません(海部さんはTanaka2025をある程度追試できる)。この点は査読者にも指摘された可能性があるでしょう。また、Kaifuら(2025表3)は各漁場を独立した個体群のように見なして漁場ごとに減少率の点推定値を出しているが、本来、ニホンウナギ資源は1つであり、親と子は同じ場所に遡上するわけではないでしょう。全体で1つの減少率を区間推定すべきです。4.5倍に増えた千葉を含めれば(全体として10-12月の時期に限るなど、補正できると思います)、それなりに幅を持った値になるでしょう。そもそも、CPUEは真の資源量減少率の定量評価にはそぐいません(悪名高いR.Myersのマグロ類9割減少説は後に批判を浴び、せいぜい3-5割と言われています)。ただし、海部さんが出された解析も貴重です。そもそも匿名でしか出せないという状況が「異常」なのです。それを諦めずに解析した。
- シラスウナギの結果は、どちらも横ばい(または有意な増減なしとKaifuら2025の要旨にある)と共通していると思います。ただし、Kaifu et al.2025には未報告をできるだけ排除したシラスの結果は図4と表4にあるが、表4【は】何のEstimateとSEか書いていませんが、おそらく増加率が-0.021と+0.101(年あたり?)。単純にSEを適用すると(それが妥当かは不明だが、それ以上の解析に必要なデータはこの論文にありません)、0.17増加から0.09減少くらいでしょう(増減不明)。おそらくこれが最も信頼できる認識でしょう。そうだとすれば、減り続けている可能性は否定できないが(24年間で8割以上減少【、同じ減少率なら14年間で6割以上】減少した可能性は5%以下かもしれません)、回復している可能性もあるでしょう。
- 【これだけでは】、CITESに掲載する根拠としては弱いかもしれません。半世紀前に比べてかなり減ったことには異論がないでしょう。しかし、2010年以後も減り続けているかはわかりません。欧州鰻と同時期の提案ならばCITES附属書II掲載に異論は少なかったでしょうが、その後の保全措置の努力の結果はもう少し見てもよい。なぜ、今になって提案するのかはよくわかりません。
- 2015年頃からのアジア諸国の努力の成果を待たずに、国際条約が土足で冷や水を浴びせることになりかねませんが、それが彼らの存在意義なのでしょう。CITESはIWCとともに、二項対立型の化石条約です。
- Red Listは過去の減少率に基づいて判定するので、IUCN(基準A-Eのどれか)、環境省の当時の数値基準を満たしたのでしょう。【いったん判定したのですから、見直しはまだ根拠に乏しく時期尚早でしょう。Red Listは絶滅リスク自体に基づく掲載ではないので、CR判定でも、クロマグロのように漁業は可能であり、利用しながら回復している種もあります。Red List判定基準もおかしいと約30年前から批判していますが、数値基準を満たすものは絶滅リスクが低いとわかっていても掲載すると明記されたので、やむを得ません。】