新型コロナ肺炎の順応的管理のための指標候補

私は論座(2020/5/4付)でPCR検査の感染者数は全数調査でも無作為標本でもないので、真の新規感染者数を推定し、それを指標として順応的管理を行い、緊急事態措置を解除する条件を明確にすべきだと述べた。死者数を指標とすると対策を講じてから効果が表れるまでに2-3週間の時間遅れが生じるとも指摘した。他の指標も考えてみる。

 (真の)現在患者数という指標も考えられるが、回復までに時間遅れを伴うので、(真の)新規感染者数のほうが迅速な指標と考えた。ほかに、重症患者数という指標はあり得るだろう。下記にECMOnet集計を示す。赤が現在のECMO実施中の患者数である。緊急事態宣言を出した4月8日より減るどころか、2倍ほどに増えていることがわかる(東洋経済サイトにある入院者数は絶対数が少なくて参考にならないように思う。【5/5加筆:累積が訂正で減るようなデータでは心もとないが、かなり減ってきてはいると思われる。】漸減傾向にあるが、まだ当分かかりそうだ。)

 

COVID-19 重症患者状況 日本COVID-19ECMOnet集計

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国内のCOVID-19に対するECMO治療の成績累計

新規死者数 Worldometers

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新規死者数 Worldometers.info


新規死亡者数(東洋経済

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【5/5,6:14加筆】感染者数、重症者数、死亡者数の年齢差 東洋経済

感染者は感染日から数日程度だが死亡者はそれから2週間程度たっていると考えられるから、同じ感染日までで比較しないと定常状態の比率ではない(重症化率、死亡率の過小評価要因)。軽症や無症状は検査していない人がこれよりおそらく一桁多くいる(重症化率、死亡率の過大評価要因)だろうが、いずれにしても、得られた重症者数、死者数を年齢で補正すれば、少し以前の真の感染者数を推定できるだろう。

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生態学者と公衆衛生学者の死生観の違い

以下のような想定問答を考えてみました。生態学者の多数意見を聞いたわけではありません。あしからず。

松田>私は、若い健康者でも0.3%の死亡率がある死生観を受け入れざるを得ない社会になるかもしれないと思います。それを覚悟すれば、かなり日常に近い経済活動ができるということでしょう。いつでもではなく、そういう事態が100年に数回起きる(ただし、次のPandemicではもっと死亡率が高いかもしれない。)。意外と、多くの生態学者は気にしない死生観を持っているかもしれません(そこが、公衆衛生学者との違いか)。問題は、1年以上の対策をとることの社会的ダメージとの比較です。そちらもかなりの犠牲がでるでしょう(福島原発事故の低線量被曝では、ごく近隣を覗いて避難するほうがリスクが高かったと言えますが、今回はComparativeではないか)。

公衆衛生学者X>国際保健では,若い健康な人でも0.3%の死亡率がある死生観をもつ社会は珍しくないので,数あるリスクの一つと考えることはわかります。ただし、途上国で人工呼吸器や酸素吸入の設備もほとんどなければCOVID-19に罹ったら健康な若者でも1%くらい亡くなるかもしれません。それでもコレラ結核という,彼らにとって身近な病気に罹ったときに亡くなる可能性と大差ないので,それほど重大なリスクと思わないかもしれません。しかし,高所得国の医師や公衆衛生の専門家の多くにとっては,たぶん絶対に受け入れたくないレベルです。

先進国でも、集団免疫策をとっている国があります。今すぐには変わらなくても、コロナ禍後に、死生観が変わるかもしれません。

お手軽「私の遠隔講義ファイルの作り方」

2021/1/21 松田裕之 Ver. 2.2

Zoomによる遠隔生講義と同時に作る場合

  1. 事前にパワーポイントファイルを作る。(以下、File名を「講義.pptx*1」として説明。)(最後にPDFにするなら、アニメーションは実践しない前提)【300kB、14枚】*2最初にダミースライド、最後に最後であることが明記されたスライドを入れておくと、事前に立ち上げておくことができ(あとで1枚目を削除)、最後に締めくくりの言葉を入れることができる(もう1枚あると思うと突然スライドショーが終わってしまう)。
  2. そのファイルのコピーを作る。(「講義(無音).pptx」)
  3. Zoom会議を始める(以下、Dual monitorを想定)
  4. 全画面をオフにする(画面1に置く)
  5. Chatと参加者の画面を開く(Clickする)(窓を画面1に置く)
  6. PPTXファイルを開く(画面1に置く)
  7. 遠隔生講義を始める直前に、Slide showボタンから記録をClickする(画面2に表示されるはず)
  8. 画面1のPPTX操作画面の全画面表示をオフにし、画面をずらして端をDragして画面を少し小さくする(チャット画面、参加者画面が見える程度に=末尾の図)。
  9. スライドショー画面でマウスを右ClickしてLazar Pointerを選択する。
  10. PPTX操作画面左上端の記録を押し、記録を開始する。
  11. 遠隔生講義を始める。画面共有により画面2の「講義.pptx」のSlideshow画面を受講者と共有する*3
  12. スライドは元に戻せない。どうしても元に戻したいときはいったんSlideshowを終了し、Slideshowの記録で再開したい頁からやり直す。記録開始を忘れずに
  13. スライドショー終了(質問などが入ると、それも録音される)。このときに忘れずにPPTXファイルを保存する。*4【70MB、14枚、45分】
  14. 授業終了後に、動画として保存する。長い場合はPPTXファイルを分割して保管しなおしてから、「エクスポート」→「ビデオの作成」→「標準(フルHDと書かれたタブを標準に変えて軽くする)→「ビデオの作成」を選び、ビデオ「講義.mp4」*5 として保存する*6。30分ほどかかる【260MB、14枚、収録時間45分】。*7
  15. 録音ファイルを作りたいときは*8無料アプリaudio-extractorまたはSwitch NCHを使って、MP4から録音だけを取り出して保存(ダウンロード)する「講義audio-extractor.mp3」。前者はかなり時間がかかる【45MB、45分】。後者は比較的早い。*9
  16. 録音ファイルがまだ重い場合は、PPTXを分割してそれぞれを動画、音声に変換する。*10
  17. 録画ファイルの編集はオンラインVideo-Cutterなどが簡便。録音ファイル(mp3)を切り刻むときはhttps://mp3cut.net/ja/が簡便。2つの動画を結合したいときはadobeサイトが便利
  18. 元のPPTXファイルから「印刷」または「コピーを保存」でファイル形式をPDFにする「講義.pdf」【400kB、14枚】。PCのない学生がコンビニなどで紙媒体で打ち出す場合を考慮し、1頁1枚のカラーと1頁4枚程度の白黒を両方準備すると親切か。
  19. ①録音M4a、②画像PDF、③スライドショー付き無音のPPTx*11、④録画MP3ファイルをウェブ上に置く。
  20. 学生のネット環境に応じて、④、または①と③の同時再生、または①をPCモニタまたは紙出力して②を聴く という形で講義を受講してもらう。
  21. 収録すると、とちったときにやり直したくなるが、極力我慢する(普段生で講義するときも、同じ失敗をしているはず。生講義を収録するほうが臨場感が維持できるだろう)。PPTXファイルの最大の利点は、失敗したスライドだけを後から収録し直せること動画ファイル作成、MP3ファイル作成にはかなり時間がかかるので、その日と翌日の夜などに行うとよいだろう。2日後には録音を受講できなかった学生に共有できる。
  22. Google翻訳ソフトなどを用いて、音声を文字に変換することができる。ただし、マイク入力以外の音声を変換するには有料ソフトが便利。 Nottaというサイトが便利(フリーなら月当たり2時間まで)*12
  23. 短縮URLを作ると便利(例えばBitleyサイト)。ただし、Fishing対策で元のURLを確認したい人もいるだろう。逆変換するサイトもある。*13
  24. PPTと録音ファイルのみがある場合。録音を聴きながら、PPTのリハーサルを動かしてタイミングを記録する(レコーディングは必要ない)。そのPPTから無音の動画を作る。それと録音ファイルをたとえば動画変換マスターで合成すればよい。*14
  25. PPTXにYoutubeなどにある動画を再生させる場合、参考になるサイトがある。(自分のPC内の動画を張り付けるとその分ファイルが重くなる。動画にリンクする場合、最初から再生されるようだ)*15

 

専修大学小川さんのサイトを参考にさせていただきました。

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ZOOM生講義中の画面1

 

*1:pptファイルはOffice345で録画しても音声とポインタは保存されないので、必ずpptx形式で保管すること

*2:試用版のファイルサイズ等。ご参考まで】

*3:画面共有自体もPC内またはCloud上に録画できる。

*4:2023/7/23修正:最近のPPTXは自動的に保存される。録画済みのスライドに上書きされることもない

*5:レーザーポインタも保存できるモードがある

*6:Office2016では、「コピーを保存」で保存形式をWMVまたはMP4を選び、ビデオ「講義.WMV」として保存する。【100MB、18枚、収録時間7分】

*7:さらに究極は、PowerPoint2007を使えば、「コピーを保存」でいきなりHTMLファイルに変換でき、WMV録音ファイルが取り出せる

*8:Zoomで録画していれば、動画と別に録音ファイルも自動保存されるはず

*9:画面共有を録画しておけば、そのファイルについても音声だけをこの方法で取り出せる。それとPPTXファイルから別途PDFを作ってもよい

*10:または録音ファイルをMediacoderDownload方法)Download方法が若干ややこしいを用いてm4aなどに変換圧縮する「講義.m4a」【21MB、45分】

*11:録音有は重いので、録音なしも作っておくほうが便利。PPTファイルのコピーを保存し、スライドショーの記録の中から「クリア」でスライドごとまたはすべての録音とタイミングを消去できる

*12:2023/7/23加筆

*13:2021/9/29加筆

*14:2021/10/16加筆

*15:2022/1/31加筆

コロナ禍 収束まで早くて1年以上…

新型コロナ、収束までにあと1.5年は大幅自粛の可能性があります(*1)。その間、ずっと緊急事態が続くわけではないが、特に国際渡航は(長期滞在目的で、2週間の自主隔離を経ないものは)大幅に制限されると思いました(*2)。

*1 http://minato.sip21c.org/COVID-19-J-rev2.pdf
http://minato.sip21c.org/COVID-19.pdf (English)
上記スライドの最後(14頁)にあります。【似たような予測が他のサイトにないか】(1)特効薬開発普及まで1.5年*2、(2)集団免疫獲得*3なら早く収まるが犠牲が多すぎ、それを目指す国はごくわずか(スウェーデンとブラジル)。(3)断続的に徹底抑圧(≒緊急事態措置)を繰り返しても【英国でも】1.5年以上かかる*3。
【日本は集団免疫ではないが、目指すは断続的な緊急事態(北海道が既に実例)でなく、スウェーデンに近い「できるだけ日常」による抑え込みを目指していたように見えます。今はそれに失敗(緊急事態発動)したが、「できるだけ日常による抑え込み」戦略に戻せる希望はあるでしょう。ただし、その場合でも、夜の歓楽街とともに、海外旅行者はかなり厳しく制限され続けると思います。やはり、抑え込む要所を定量的に分析したいところですね。順応的管理でもよいが、効果検証方法と検証に要するタイムラグを見極めないと難しい。成功している間にRtがほぼ1前後では話になりません。エゾシカ管理と同様に、顕著に減らし、漸減と実験的漸増(どの対策を省略してもRt<1を保てるかを検証する期間)を繰り返すことになると思います。漸減が緊急事態とは限らない=または、今の緊急事態が欧米とは別物と割り切る】。

補足
*2 ワクチンや特効薬の開発には最低1-1.5年(普及入れると+半年?)(たとえばハーバービジネスオンライン4/18
*3 澤憲明氏の紹介4/9  徹底抑圧無しでも感染爆発が起きなくなるまでは、1.5年は断続的に徹底抑圧を繰り返す必要がある(英帝国学院第9報の試算*4のFigure 4)。【その場合でも、収束は世界同時ではないので、緊急事態措置一時解除時の国際移動は厳しく制限されるでしょう。】また、収束後も集団免疫*3は獲得されていないので、一定の活動制限は特効薬普及による撲滅まで、超長期に続ける必要がある。
*4 https://www.imperial.ac.uk/media/imperial-college/medicine/sph/ide/gida-fellowships/Imperial-College-COVID19-NPI-modelling-16-03-2020.pdf
松田

 

Zoom懇親会

Date: Sun, 12 Apr 2020 23:48:41 +0900      Ver. 1.2

遠隔会議後の遠隔Zoom懇親会、今日やってみました。それなりに楽しめました。遠隔会議は11名いたが、懇親会は5名になった。(4/18に2回目体験。今度はSkypeで10人近く参加して3時間以上続いた)

・自宅で家族がそばにいると、やはりやりづらそうですね(落伍者複数。家族の顰蹙で諦めた方もいたようです)

・酒量が意外と嵩むようです(多数意見)。90分が限界かも。(あるいは水かお茶を酒とともに用意しておく)

Skypeだと「Galleryモード」で4人までしか画面に出ない(自分を入れて5人までなら便利)。話者を自動的にZoomupするモードがあるので、そちらを使った。
・自宅等の背景が気になるならZoomでは仮想背景機能があり、皆がそれを使っていました。Skypeでは「背景をぼかす」機能を使う(ただし、次の会議のためにもとに戻すのを忘れずに)。
・あらかじめ飲食物を自前で準備が必要か。(会議は書斎で、懇親会は家族が許すならリビングに移動するとよいか)
・会議では発言時以外は音声ミュートだが、懇親会だと皆が常時オンにするようです。雑音が入りやすくなる。参加者のネット環境により回線が微妙に途切れることがあります。
・10人以上だと、もしかすると会議の場を二つ同時に設けて、居酒屋のテーブルを分けるように、どちらかに入るという手もあるかもしれません(未試行)。別の会議が傍聴できないと成り立たないかもしれませんが。(たとえばPCとiPadとか、ZoomとSkypeと分けるとか、別のIDでウェブ上で参加すれば、同時に複数参加できる。複数名が同時参加するとハウリングするかもしれない(要確認))。

接客業がクラスター源として強く自粛が求められている。遠隔接客業が成立しないかと思うが、「家族が傍聴している可能性があるときに、話題が限られる。家族のいない話の場を求めているはずだ」ということらしい(独身単身もいるはずで、このご時世、背に腹は代えられないと思うが。もっとも画像も音声も盗聴される恐れはあるだろう)。この事情は、遠隔懇親会にも言えるだろう。

Zoom以外に、たとえばHousepartyという媒体がお勧めらしい。(肝心なのは媒体より事前の飲食物の準備とか、家族への根回しとか、水を忘れないことだが、そういう手引きサイトが見当たらない。無料Zoomにあった40分制限はむしろ利点かもしれない)

司会を決めるとよいかもしれない。きっと、大勢参加していても発言を促す「仕切り」が好きな人がいる。アルコールが入ると司会も饒舌に、かつ公式会議の司会の練習になる。

科学を無視し、圧力団体に牛耳られるワシントン条約と東京都象牙会議

目次

2020/3/27 加筆 羽山伸一「野生動物問題とは何か」FB2020/3/26

今月号の東大出版会「UP」に羽山伸一さんがこう書いている。”前橋市など平野部の市街地で人身被害等が頻発”。”これらの現象は、「開発で山に餌がないから街へ出るようになった」と安易に解説するような事態ではない。”“2018年に岐阜県で、わが国では28年ぶりとなるCSF[豚熱]が発生し、イノシシに感染してしまった。28年前にはイノシシが平野部に生息する状況ではなかったこともあり、イノシシへの感染対策は準備すらできていなかった。”“野生動物問題は、人間と野生動物がいる限り、未来永劫続くものであるという認識が政策決定者に欠けている。もう、頭を切り替えるべきだ” (引用終わり)
東京都もNY州も、野生のシカを駆除している。そして、東京都は、アフリカで人身被害を起こすアフリカゾウを駆除させない運動に加担しようとしている。

今猛威を振るっているコロナ禍も、人獣共通感染症といわれる。野生動物が増えるのはよいことと思うが、人間と野生動物の距離をどう置くかが問われている。

野生ゾウの群れが住宅襲撃 食べ物あさり屋根を破壊--絶滅危惧種アジアゾウでも、住宅に群れが侵入する被害が出ている。それはスリランカでも同じだ(論座拙稿後半)。 

2020/3/25 圧力団体の声のみを委員に紹介する東京都「象牙会議」

自治体の委員会で、自治体事務局が圧力団体からの陳情書を率先して委員に回覧するのはかなり異例だ。 それに対して、CITES元事務局長からの都知事あての書簡は、1週間前から再三申し入れているにもかかわらず、委員に共有していない。CITES専門家は、象牙市場閉鎖はゾウの保全に逆効果であると訴えている。(台湾からの)不正輸出が日本で消費され、乱獲に歯止めがかけられないのは、むしろニホンウナギである。東京都は、ニホンウナギの流通については、【象牙と同様に国より率先して、例えば台湾から違法に輸出されたうなぎの流通に対して】対応する気配はない。専門家の科学的見解が無視され、圧力団体の声のみに同調する姿勢は、象牙に限らず、極めて危険である。

 東京都有識者会議事務方よりの電子メール 2020年3月17日 12:33 件名: 環境団体からの提言書について

有識者会議」委員の皆さま(宛先多数のためBCCにてお送りしております。) いつもお世話になっております。東京都政策企画局のxxです。 昨日、東京都知事宛に添付の提言書が届きました。委員の皆さま宛にも写しが送付されているとのことですが、ご参考までにご連絡させていただきます。何卒宜しくお願いいたします*1

 松田の事務方宛の返信メール March 17, 2020 5:27 PM

なお、先ほど「環境」団体からの提言書を回覧いただきましたが、一方の資料だけを回覧することは大変残念です。

 昨年5月に東京都知事、関係大臣あてに送られたCITES元事務局長の書簡には、以下のようにはっきりと、象牙市場閉鎖はゾウの保全に逆効果である旨が記されている。

We would like to point out that if Japan closes its domestic ivory market, as suggested by Mayor de Blasio, this will do more harm than good to the cause of elephant conservation. To the contrary, we urge Japan to support moves to restart a carefully controlled global trade in registered ivory because this will truly aid elephant conservation.

 この有識者会議の阪口功座長も、学術図書では以下のように述べている。

AESGは、科学的知識と付属書掲載基準(ルール)に基づき、COP7に対して象牙取引にモラトリアムを課した上で健全な個体群を付属書IIに据え置くことを一致した見解として勧告していた。しかし、COP7では数的優位に立っていた取引反対派は自国の利益を最大化させる戦略を取り、あくまでも全個体群の付属書掲載を貫徹しようとした。その結果、COP7では科学的知識、専門家の勧告、付属書掲載基準が広範に無視され、すべての個体群が付属書Iに掲載されることになった。 (阪口功著『地球環境ガバナンスとレジームの発展プロセス-ワシントン条約NGO・国家』国際書院, 2006 P258。下線引用者)

阪口座長の前回有識者会議での見解は以下である。

私が書いた本の中でも、ジンバブエボツワナの持続的な利用プログラムと、非常に高く評価しており、彼らも正しいことをしているがゆえに個体数も安定して、むしろ増加していると。
他方で、国際機関の研究者として、彼らの活動をサポートするには、ワシントン条約会議で3分の2の賛成を得て、もう一度、ワン・オフ・セールという、一度限りの象牙取引というものも認めてもらう必要もあると。これは非常に困難なことであります。日本に違法取引の市場がまだ残っている状況では、3の2の賛成を得ることは難しいと。もし、我々、この有識者会議で特定の方向に進んで今議論を進めようとしているわけでは決してなくて、オープンマインドに議論していただくということになるわけですが、もし仮に彼らのプログラムを支えようとするならば、都として、国として、諸外国から十分な取引規制が行われているというふうな評価を得られるような体制が必要となってくる。まさしく、都でこういった議論がこれから進められるのであれば、非常にうれしいことであるかなと考えております。  

持続的利用のために違法取引を規制することと市場閉鎖は全く別物である。彼は別のところで以下のように言っているようだが、日本で流通している象牙は(少なくともほとんどは)密猟された象牙ではない。それはCITES資料でも、環境省サイト(問6)でも説明されている。

阪口氏によれば、密猟された象牙はアフリカや香港の輸出業者が作成した不正許可証を貼られ、あらゆるルートを通って、日本へ到着する頃には合法象牙に姿を変えているのだ。

ではなぜ、象牙の持続的利用が必要なのか。それは、アフリカにおける人と野生動物の関係にかかわる。 (これは次回有識者会議*2で述べる予定。松田論座岩井雪乃氏のサイトも参照)そもそも、東京都も野生動物であるニホンジカなどを捕殺している。ニューヨーク州その周辺も同様だ。むしろ狩猟を奨励している。しかし、一部の「環境団体」の国際的な圧力により、アフリカではゾウの捕殺は厳しく制限されている。

 ちなみに、ニホンウナギは、本当に台湾から香港に不正輸出されて日本に流通し、日本人が消費している。こちらの規制を急ぐよう都知事に申し入れたが、今のところ、対策をとる気配はなく、政府が取り組めば同調するという都水産課からの返事だ。

 専門家の科学的見解が無視され、圧力団体の声のみに同調する姿勢は、象牙に限らず、極めて危険である。

2020/3/27加筆 テレビ東京タンザニアの象害問題 FB2020/3/17 

【3/16】放送のテレビ東京の番組早稲田大学の岩井雪乃先生がタンザニアでゾウの被害と取り組む様子がよくわかった。(3時間番組の1:43’11”から26分間弱)。野生の象は保護区の隣の村を襲い人を殺している。住民は象を憎んでいる。それなのに政府は被害者に補償せず、国際団体と政府が象を保護している。これでは住民が村からいなくならない限り解決しないだろう。

*1:なお、この「環境団体」の書簡は今年3月12日付だが、コロナ禍については何の言及もない。 

*2:4/13と4/16に2度会議を行う予定。この大変な時期に、何でそんなに急ぐのか。

新感染者数を減らすことが重要ではないか

 

2020/3/23 下記サイトは間違いもあるかもしれないので、専門家( たとえば中澤港さんのサイト)を読んでください。

2020年4月1日 岩田健一郎さんの指摘

「日本は、ドイツなど一部の国と違い、そもそも感染者の全数把握を目指していないことに注意すべきだ。」「感染経路が分からない人が新たなクラスターを作り、感染経路の捕捉や抑え込みができなくならないようにするのが大事だ。」「当初から指摘しているが、無症状の人や軽症の人は入院すべきでない。対処すべきは患者で、ウイルスではない。」「私が勤務している病院では、新型コロナウイルスの患者やその疑いの患者を診察する際、聴診器は使っていない。」

2020年3月30日 小野昌弘氏のサイトにある英国の感染防止策

小野昌弘氏のサイトにある英国の感染防止策は参考になります。まず、彼が引用している英国政府通達から

Stay at home

  • Only go outside for food, health reasons or work (but only if you cannot work from home)
  • If you go out, stay 2 metres (6ft) away from other people at all times
  • Wash your hands as soon as you get home

Do not meet others, even friends or family.

You can spread the virus even if you don’t have symptoms.

 小野昌弘氏のサイトによれば

1. 食料品など生活必需品以外の店はすべて閉鎖、

2. 市民は食料品・薬等の買い物・散歩など1日1度の運動のときだけ外出可

3. 通勤が必須であるごく一部の例外を除き自宅勤務

4. 公共の場での二人以上のいかなる集会も禁止、結婚式・宗教集会などいかなるイベントも禁止

5. これらを守らない場合は警察による罰金や介入がありえる。

そして外食産業に対して通常の店舗営業を禁止し、店舗には入らない形での持ち帰り用販売のみ許可する政府通達がでる。これに伴い、多くのレストランならびにほとんどのカフェやファスト・フードは閉鎖した。スーパーマーケットや薬局など最低限の生活に必要な店のみ残された状態になりつつある。

  この、通常ではない店舗営業は、日本でももっと早くやってよかった。中国では早くからそうしていたし、タクシーの運転席と客席も遮断していた。外出禁止とか営業禁止などばかり報道されるが、経済活動を維持しながらでもやれることがあったはずだ。

 

 

2020年3月25日 10:14緩和策(集団免疫獲得策)と抑え込み策

感染症対策には緩和策(集団免疫獲得策)と抑え込み策があり、どちらをとるかが大きな分かれ道です。最初英国は前者を公言していたが、事実上撤回に追い込まれている。安倍首相もそれに近い発言(ピークを遅らせる)をしていたが、専門家会議の勧告は抑え込み策です。

・抑え込み策は感染者が広がり始めると社会活動の大きな制約を伴い、成功するとは限らず(武漢、中国、北海道では成功か)、世界中が沈静化するか特効薬普及まで抑え込みの継続が必要。

・緩和策は一時的に膨大な患者と死者【】を伴う。しかし、一度集団免疫*1を獲得すれば、他国で流行が続いていても、免疫獲得者は通常の活動をほぼ再開できる(未感染者は引き続きある程度の注意が必要)。【】
 

 今回の場合、どちらが合理的かはわからないし、抑え込みができるかどうかによっても、国によっても、違うでしょう。日本では、北海道で成功しつつあるようなので、抑え込みに期待していると思います。

 英国の報告書によれば(あくまで英国の場合の試算だが)、緩和策には休校はほとんど効果がない。抑え込みには休校も必要【とあるが…(以下参照)】

2020/3/24 中澤港さんのサイトにある英国王立大学サイト第9報の紹介(20200318追記)が重要。緩和策(集団免疫獲得)戦略と抑え込み戦略という根本的に違う選択肢があり、そのどちらをとるかが分かれ道。第9報では患者隔離、自宅隔離、70歳以上接触回避、全人口対象の社会的距離策など様々な要因の効果を分析し、緩和策での医療崩壊の度合い、抑え込み策に必要な方策などを英国の事例で定量的に分析している。ただし、中澤氏はその信頼性を疑問視(「この結果の数字は,信用しすぎない方がいい」)。 

2020/03/22 8:01 日本の戦略は緩和策か抑え込み策か

情報感謝。私にはまだ国の戦略がよくわからない。

1)抑え込みを諦めて集団免疫を目指しているか?否
2)ピークを遅らせる戦略か? 否。これは集団免疫戦略の発想
3)クラスターの摘出と抑え込みは可能か? 困難だが努力中(北海道では成功?)
4)社会全体の人間活動を制限して感染者を減らすか? 武漢では可能だった(要確認)
 
日本がどの戦略を取っているのか実はよくわからない。1や2でなく、3か4だと思います(3でも、ある程度4の手法も併用)。現在の活動自粛は2の手段でなく、4の手段。そう思っていない識者も多い。
3と4は地域によって使い分けても良い。それぞれの地域がどこで、それぞれでどうするかが専門家勧告ではわからない。
そして、感染者をかなり減らせたか(その見極めの基準が必要)、まだほとんどいない地域では、より一般的な衛生管理で良いはずです。(この両者の対応を分けるようにも読めるが、その理由が不明)
さらに、集団免疫を獲得した地域がもし出てくれば、もっとずっと緩い対策で良くなるでしょう。
4という方針が成功し得るなら、これは後からでも可能なはずです(効果が出るまで2週間の時間遅れを覚悟)。
 
いずれにしても、日本が集団免疫を獲得していない以上、あるいは世界中で抑え込みに成功する目処が立たない以上、対策は当分必要でしょう。【】
 

2020/3/22 中沢さんのサイトを見ると丁寧に書いている。少し長いので、これから要約するのでしばしお待ちを

 

2020/3/21 この日の理解

素人考えだが、新感染者数を減らすことができている地域がある。先週までは全国の新感染者数は減る気配がなく、高止まりしているように見える(厚労省)。重要なのは「ピークを遅らせる」ことではなく、新感染者数をへらすことではないか。どなたか教えてください。

・最も避けるべきことは医療崩壊(特に「集中治療必要患者数」>「集中治療可能患者数」)だろう。通常の指定感染症の場合は感染経路を追跡し、患者とその接触者を隔離・注意することで新感染者を抑えるが、今回は(潜伏期間中も感染する可能性などがあり)それでは不十分で、大発生を食い止められていない。しかし、感染者数がある程度増えた後でも、社会全体の人間活動と濃厚接触を制限することで、新感染者数を抑えることができている地域がある。この成功例に学ぶべきだ。

2020年3月21日 12:34

 ・日本などで「大発生」が起きていないのは、集団免疫を獲得したからではなく、人間活動(濃厚接触)を減らすことで感染率を下げているから。

・だから、Active感染者数(累積感染者数から治癒者と死者を除いた数)が激減しない限り、あるいはかなり後に集団免疫を獲得しない限り、対策を緩めれば大発生は起きる。Active感染者を減らすことに成功した地域は、その努力を続けていれば、収束に向かう可能性がある。

・Active感染者が漸増している限り、「Outbreakのピークを遅らせる」【医療崩壊を防ぎ、治療法開発に期待する】ことはできるが、収束することはない。かなり後に集団免疫を獲得するまで待つことになる。

・未大発生地域、大発生地域、収束地域(+集団免疫獲得地域)に分けるのはよいと思う。

1.未大発生地域は衛生に注意して大発生を予防する。

2.大発生地域は大幅に人間活動を制限して新感染者数を減らすことに努める(他地域の教訓から、それは可能だろう)。

3.収束地域は、人間活動をある程度再開し、未大発生地域と同様の対応とする。

4.集団免疫獲得地域は、域内での接触制限を緩めることは可能。未感染者(免疫未獲得者)は引き続き、特に域外との接触には注意したほうがよい。

 となると、1(=3)と2および4でそれぞれどうするかの指針があればよいことになる。 すでに中国(特に武漢)とか北海道など、新感染者数を減らす成功例があるのだから、それぞれで具体的にどんな対応すべきか、わかってくる気がするのだが。【成功事例の対策すべてが有効とは限らない。そこを吟味すればよい。具体的な対策の成否の指標は、Active感染者数(特に重症者数)を減らすことだ。Active感染者数を減らせなければ対策を強化する(効果検証に潜伏期間最大2週間の時間遅れがある)。これらの方針は可逆的に変更可能な順応的管理になるはず】

*1:集団免疫とは、感染者一人が病気を移す平均数R0の場合に、1-1/R0の割合の人が免疫を獲得すると沈静化に向かうこと。R0=2.5なら6割が免疫獲得すればよい。