第3回風力発電施設と自然環境保全に関する研究会での松田の発言

平成19年5月29日(木)16:00〜18:00 環境省公式サイト
2.場所 各省庁共用1028号会議室(経済産業省別館10階)
松田の発表はこちら
その他の発言(議事録より)
【松田委員】  私の資料の4枚目をちょっとごらんいただきたいんですが、風発がどのぐらいの採算があるか。これはもちろんあくまでテストケースですが、これを見ますと、損益として1基当たり1年間に例えば200万円というのが出ております。ここに環境保全費用は入れていません。環境アセスメントに大体幾らぐらいお金がかかるかは、多分、原科先生のほうがよくご存じだと思いますが、ダムとか、その辺の事業だととてつもないお金がかかります。もちろんそんな必要はないわけですが、今、補助金で成り立っているということをもう一度よく考えていただきたい。
 つまり補助金で成り立って、環境影響評価もやって、かつ採算がとれるということをやるというのは非常に厳しいことなので、それをもし変えて増やすのであれば、そういう意味での例えば補助金の制度、あるいは先ほど私が言いましたように、もしその場所は撤退するという場合の保険の制度とか、そういうのを整備しない限り民間に任せておいて、RPS法の数値目標を達成するのは極めて困難、あるいは国としてやる気がないとしか私には思えないです。
【松田委員】  55秒で合図ください。
 まず、マップですけれども、長井委員はRPS法の数値目標に達成できるかどうかというのを視野に入れたマップをつくっていただいたと私は思っています。ほかの環境省のほうからはそういうマップが出ておりません。とにかくアヴォイドとか、ランク付けでも何でもいいですから、そのときにそれを達成するかどうか見積もり、展望を持ったマップが必要であるということです。
 もう1つは、原科委員からは日本の環境影響評価は2けたおくれていると。それを全部やるべきだというのは、私は【風発】だけにやれとは申しません。だけども、公園内ではそれをやるというコンセンサスは今ほとんどできております。むしろこれは積極的に生かすべきであると思います。海上、海の上では、先ほど長井委員の最初のあれにもありましたけれども、漁礁等を含めて、つまり魚が寄ってくる、それで鳥も寄ってくる。そういうものも含めた形のものを開発するということをぜひ取り組んでいただきたい。
 もう1つ、風発は分散エネルギーだとおっしゃいました。ですから、蓄電の技術、これも踏まえた上でやっていけばかなり変わると思います。
 それからもう1つ、何度も言うようですが、単に風発だけじゃなくて、ほかの要因で死んだ場合のオジロワシとか、そういうものは記者発表していただきたいと思います。

渡り鳥の飛翔エネルギー

Date: Thu, 29 Mar 2007 19:19:24 +0900
 今、風車問題に取り組んでいます。佐田岬などにたくさん風車を建てると、渡り鳥の飛翔経路が変わったというデータがあるようです。
 鳥の衝突ばかりが問題でしたが、当然、経路が変わればそれだけ余分に疲れると予想されます。経路と風のデータがあったとして、その飛翔エネルギーの差が計算できるでしょうか?【】
 単純に考えて、弱っている個体や若い個体等がしんどければ、経路をかえずに危険を冒して風車の中を突っ込むと想像します。しかし、特にそのような話は聞いていません。群飛と単独(先頭?)の飛翔の労力の差より小さいような気もします。
 事前の環境影響評価では、経路を変えないとして、何羽が風車の翼に当たるかを試算し、衝突死の数が少ないと予想します。【鳥が適応的に振舞っているとすれば、】衝突するよりも、影響は小さいと私も思います。

Date: Mon, 2 Apr 2007 11:11:35 +0900
ありがとうございます。当然、鳥は楽な場所を選んでいたでしょうが、それが邪魔されて迂回したとしても、それほど大きな生存率、繁殖率への影響があるとは考えにくいですね。かなり弱った個体なら別でしょうが。
 それくらいで、よい繁殖地や越冬地を放棄するとは思いません。よい代替地があれば放棄するかもしれませんが、それは個体群への影響というよりは、ラムサール条約の登録地に飛来しなくなるという(人間側の都合)でしょう。
 そして、これ(飛来地変更)を避けるべきだというのは、一つの価値判断として成り立つと思います。

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

第2回での私の発言は以下のとおり(正確な表現は、議事録公表後に掲載します)
大野委員岡安委員の発表を聞いて、環境団体にも多様な意見があると思いました。
・・・
オジロワシの剖見について、風発以外の事例も提示頂きたい・・・風発だけ衝突死を【記者発表して】大写しにしているのは変だと思います。これは多分、野鳥の会の方もそう仰ると思います。すべて平等に【衝突死は】扱うべきだと思います。
 この発言は、第3回のときにも2度繰り返しました。遵守されると期待しています。

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

第1回における 松田の発言 は以下のとおり(赤字は誤植修正、太字は強調)
【松田委員】  まず、これは祓川さんの資料5の11枚目、12枚目あたりなんですけれども、まずアメリカの例に比べて風力発電によるバードストライクが少ないということはありますけれども、これは調査方法がまだ十分に統一されていないとか、そういう問題もあると思いますので、これは統一するようなガイドラインはやっぱりあったほうがいいかなと思います。
 例えば12枚目を拝見しますと、オジロワシが2005年までで4例ですか、その後、合わせて7例ですけれども、ほかの衝突に比べてずっと少ないということがありまして、古南さんのほうからは希少猛禽類はほかのものに比べて1羽当たりの個体群への影響が大きいということがありましたけれども、ほかの要因と比べますとこれはかなり少ないというデータになっています。ただ、その場合、どのぐらい少ないのかということを検証したいんですけれども、それには、それぞれの当たっているやつが、例えば年齢がどのぐらいだとか、そういう基礎データがほんとうはいただきたい。ところが、オジロワシだけだと53例ですか、53例あるというのはこの論文にあるんですけれども、それ以上詳しいデータに当たれないという状況がありまして、私どものほうではこれ以上の解析ができない状態になっています。ですから、まず一番重要なのは生死ですね。それから年齢、せいぜい亜成と成の区別であるとか、発見場所であるとか、あとは、当然鉛中毒やその衝突に関しても全数がはっきり報告できているわけではなくて、発見率というのがそれぞれあるはずですので、死後何日たっているという大ざっぱな所見というものがそれぞれにないと、我々としても個体の生態学的な解析をやりようがないという状態がありますので、ぜひそういう情報を積極的に開示していただきたいですし、むしろ問い合わせ先みたいなものをちゃんと明確にしていただきたいと思います。
 それから、同じバードストライクに関して、資料4の5枚目ですか、オジロワシ、北海道で7例当たっている。そのうち4例が苫前であるということなんですが、これは補足のご意見がありましたら教えていただきたいんですけど、これが渡りであるのか、そこのそ場の営巣個体であるのかというのも非常に重要な情報なんですけど、それもわからないんですね。これは多分DNAとか調べて、この4例がもし血縁であるとかそういうことがわかれば大分重要な情報になると思いますので、ぜひDNA解析などをさせていただきたいと思います。
 あと、古南さんのほうから、むしろまじめに情報を開示している者ほどいじめられるというのはよくないということで、むしろ前向きな例として紹介していただいたというふうに発言いただいて、ほんとうにありがとうございます。今の古南さんの発言を聞くと、多分事業者側も大分意欲がわいてくるんじゃないかと思います。それはこの場にいる人しかわからないことで、もっとそういうふうにむしろ前向きに取り組んでいる人ほどほめるという体制がないと、むしろマスコミなんかは完全に逆になっていると思いますので、ほめるという体質をつくるには、やはりそういうふうにいい調査をやって、いい合意形成を図っている事業者などには、例えばですけど、環境大臣賞を与えるとか、そういうような積極的なポジティブ・インセンティブもぜひご考慮いただきたいと思います。
 以上です。
・・・・
【星野野生生物課長】  先ほどご質問ありましたオジロワシのデータの件ですけれども、環境省の地方事務所で解剖した結果もありますので、それは別途紹介して、またご報告させていただきます。
【松田委員】  お願いします。

オジロワシ死亡53事例についての解剖情報のお願い

Date: Wed, 2 May 2007 09:50:32 +0900
 横浜国立大学の松田裕之です.「風力発電施設と自然環境保全に関する研究会」がはじまりました.このような意見交換の場を儲けた意義を高く評価し,委員の一人として参加させて頂いたことに感謝しています.今後も活発な議論を行い,文字通り「(風力発電を)推進するにあたって野生生物保護や景観保全との両立を図る」ために努力する所存です.
 さて,3月30日に開催された第1回目の議事要旨が掲載されています.この中で,私は「オジロワシの死亡数53事例について解剖情報をお願い」したのですが,現時点(5月2日)においても,事務方(環境省でしょう)からは何の連絡もありません.公開されている議事要旨にも同様の記載が残されています。(詳しい議事録を頂いたように思いますが、すいません。メールを誤って消去したようです。お手数ですが再度お願いします)
風力発電施設と自然環境保全に関する研究会(第1回) 議事要旨

補助金と環境影響評価のインセンティヴ

Date: Mon, 7 May 2007 10:03:37 +0900
 ある方から、以下のような情報をいただきました。
 似たような発想で、環境影響評価を事業者に促すことを提案すればうまく行く可能性があるでしょうか?実施するとなれば環境省の予算でやるのが筋だと思います【】。今回、環境省自然局は風力発電に対して巨額の予算を計上しています(他のバイオマス中心の予算「地球温暖化対策技術開発事業」に比べれば一桁少ないです)。残念ながら、モニタリング(本来環境省はこれが大好きなはずなのですが)にはほとんど予算を使わず、鳥衝突防止技術に主眼が置かれているように読めますが、このままでは、いつまでたっても実際の衝突数は日本では不明で、予防原則により立地制限という状態が続くでしょう。情報を集めようとしていない張本人は環境省だと私は思います。【】
 国立公園内に限ってもよいと思います。これならば、作るならば戦略評価に近いものをやらざるを得ないと聞いています。問題は、国立公園を風発の聖域にするか、戦略評価に向けた先例とするかです。
 何度も言うように、温暖化対策は国策としても優先度の高いものです。風車を立てて鳥衝突の事後評価をやって情報を集めるならともかく、外国が進めているのに、「わからない」まま手をつけないで済む問題ではありません。

かつてNEDOでは風況調査に対して100パーセントの補助を出していました。生データを全て提供することが条件だったはずで、形としては共同研究だった思います。この発想を応用すれば、環境アセスを実施する事業に対するインセンティブも出てくるでしょうし、国としても生データを集約することができるようになるわけですから、それなりのメリットも発生するんじゃないかと思います。

松田 環境省エネ庁風力発電検討会でのプレゼン内容案

Date: Sat, 28 Apr 2007 08:57:13 +0900 (JST)
環境省自然環境局(国立公園)、経産省エネルギー庁合同の風発問題の検討会があり、私はその委員をしています。少し先の話ですが、私の意見表明の際の資料素案を[risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2007/070529.ppt:title=サイト]に置きました。
 石油枯渇のシナリオについては素人ですので、もしお気づきの点がありましたらご指導いただければ幸いです。石油供給量は2006年頃から政情不安などによる一過性のものでなく(?)長期的に減り始める予測をサイトから引っ張り出して載せていますが、これは本当なのか。また、よりよい資料があればご教示いただければ幸いです。