11/22横浜国大公開講演会と長期生態研究の重要性

Date: Mon, 21 Nov 2005 02:53:58 +1200
国大生態関係各位
 11・22の下記公開講演会が火曜日に迫っています。皆さんに再度の参加を呼びかけます。もちろん、学外からの参加者も歓迎します。
 わが横浜国立大学は、植生調査の理念・方法論・その実践活動を通じて日本の生態学会を主導し、海外からも高い評価を受けていた伝統があります。
 私が学生の頃は大規模長期生態観測のプロジェクトが下火で、1968-74年頃のIBP*1の伝説しか知りませんでした。進化生態学のような分野を個人研究として担うほうが主流でした。しかし、1990年代からは環境問題が重視されるとともに、IGBP*2をはじめとして再び長期生態研究(LTER*3)の重要性が認められるようになりました。日本生態学会での取り組みは海外に比べて大きく遅れ、1999年の科研費企画調査(中静さんら)を契機に日本生態学会でもたしか数年前に大規模長期生態学専門委員会が設立したばかりだと思います。詳しくは学会サイトをご覧ください。
 地球フロンティアとの連携、国立環境研究所との連携、海洋ではCensus of Marine Life(NaGISA)などとの連携のどれをとっても、この視点は欠かせません。もちろんそれだけが生態学ではありませんが、それぞれの独立した研究者がさまざまな視点からこのような大規模調査に貢献できることも生態学の良さだと思います。今後の学生たちは、研究者を目指すだけでなく、民間の関連企業に勤める際にもこのような取り組みを視野に入れて活動する必要があると思います。
 今回は現代におけるその中心メンバーである中静さんが来訪されます。せっかくの機会ですので、一人でも多くの方が参加されることを期待します。

案内
来週の火曜日に以下の講演会が開催されます(無料)。お忙しいとは存じますが、どうぞ奮ってご参加くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、会場準備の都合上おおよその参加人数を把握するため、ご参加くださる方は講演会・懇親会の別に事前にお知らせくださいませ。
参加申し込み先 eco-coe4@ynu.ac.jp(小澤 美千恵)TEL/FAX : 045-339-4493 
第24回COE公開講演会
タイトル「長期生態科学研究の現状と展開−丹沢山地での可能性」
 11月22日(火)14:30―18:00
 横浜国立大学 環境情報1号棟 5F 合同セミナー室

  • 14:30−14:40 金子信博 教授:主旨説明
  • 14:40−15:30 中静 透 総合地球環境学研究所東北大学生命科学研究科兼任)「長期生態研究とモニタリングに関する最近の動向」
  • 15:30−16:20 日浦 勉 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター苫小牧研究林「北海道大学苫小牧研究林におけるLTERの現状」
  • 16:20−16:30 休憩
  • 16:30−17:10 中島尚子 生物多様性センター「環境省における重要生態系監視地域モニタリングに向けた取組み」
  • 17:10−17:30 丹沢山地の自然史概要 植生(横浜国大・大野啓一)地質(横浜国大・石川正弘)
  • 17:30−18:00 総合討論
  • 18:30−懇親会;きゃら亭(学内;4000円)
  • 進行:金子信博 連絡,懇親会:酒井暁子

講演会の趣旨 丹沢山地は大径のブナ林が発達するなど高い保全上の価値を有する地域ですが、大都市に近接していることから大気汚染の影響を受けやすい上、関東地震震源地に近いために地質的に脆弱で斜面崩壊を起こしやすく、かつ近年はシカの食害も深刻です。丹沢山地では、これらの何重もの環境負荷のために、様々な生態系サービスの喪失が懸念されております。本学COE「生物・生態環境リスクマネジメント」では、こうした丹沢地域で生態系リスクを多角的に評価し、リスクマネジメントに結びつけるために、環境科学者、生態学者、地質学者が共同で研究を進めています。COEは来年度で終了しますが、生態系リスクの評価とリスクマネジメントを行うためには長期にわたる生態系モニタリングを行うことが不可欠であるとの認識から、今後新たに長期生態系観測を行う体制作りを模索することにしました。そこで本講演会を企画し、中静透氏、日浦勉氏、中島尚子氏の3名にお話を伺うことにしました。まず長期生態科学研究の全体像を理解するために、その第一人者である中静氏に海外も含めたモニタリング研究の動向や成果についてご講演いただきます。次により具体的なイメージを得るために、北海道大学苫小牧研究林でモニタリング研究を展開されている日浦氏に、サイト運営や研究成果に関する現状等をご講演いただきます。そして現在環境省の全国モニタリング1000プロジェクトを推進している生物多様性センターの中島氏に、プロジェクトの説明をお願いしました。以上の方々のご講演を踏まえ、本学の大野と石川がそれぞれ長年研究を行ってきた丹沢山地の植生と地質について概要を紹介し、丹沢山地において独自の視点から長期モニタリング研究を行う可能性を議論したいと思います。

*1:International Biological Programme国際生物学事業計画

*2:International Geosphere-Biosphere Program地球圏-生物圏国際協同研究計画

*3:LTER=Long term ecological research