風力発電に関する加賀市長の見解

Date: Fri, 2 Mar 2007 09:51:43 +0900
下記の加賀市の公式サイトに掲載されている加賀市長の見解には驚きました。

あわら市における「風力発電施設」建設に係る野鳥等保護について、下記のとおり加賀市と(財)日本野鳥の会等が共同記者会見を行うと共に、関係機関に要望書を提出しました。なお、同記者会見の席上において、市長は、現時点での民間事業者による計画に反対する意向を表明しました。
【この声明には以下のように記されている】
風力発電施設計画者は、風力発電施設の調査計画に際し、片野鴨池の生態系及び鴨池をねぐらにし坂井平野を餌場として活動するマガン、ヒシクイ等希少鳥類の生態について、風力発電施設に係る充分な環境影響調査を実施し、同施設建設による鳥類への悪影響が一切出ることのないよう慎重な対応を実施すること。

 風力発電環境影響評価法の対象事業ではありません。しかし、加賀市長が反対しているあわら市の風車計画では、事業者が自主的に環境影響評価を行っています。それを法の趣旨にできるだけ沿って慎重に行ってほしいという声明ならば理解できます。
 しかし、「一切の影響が出ない」というのは、環境影響評価法の趣旨ではありません。事業を行う以上、そのようなことは原理的に不可能です。影響が懸念されるからこそ、それを回避、低減、代償する環境保全措置が法によって求められているのです。法の対象事業ではない風発事業に対して、法でさえも求めていないような措置を求め【ていることになります】。
 環境影響評価法では、騒音などの工学系の評価についてはある基準を設けて、それを達成する「目標クリア型」の保全措置が求められます。基準を達成しても影響が一切ないということではありません。それは社会的に許容される影響の程度を定めたものであり、それを満たしていても、周囲に迷惑をかけていないと事業者が考えてよいとは言えません。注目すべき生物への評価については、このような基準はありませんが、「実行可能な範囲」で回避・低減・代償措置を採るという「ベスト追求型」の措置が求められます。この場合も、影響の対象が問題であり、天然記念物のマガンが1羽でも当たってはいけないという意味ではありません。懸案の片野鴨池の場合に重要なことは、ラムサール条約登録地に越冬する雁鴨類が今後も存続し続けることです。
 片野鴨池をねぐらにして越冬する雁鴨類は、マガンについては福井県あわら市にある採餌場を利用しています。鴨池と採餌場の両方の保全が必要です。したがって、貴重な自然の価値は、加賀市は自ら所有する片野鴨池だけでなく、あわら市との共有財産と考えるべきでしょう。