特殊地下壕 国交省への生態学会意見案について

Date: Sat, 11 Jun 2005 07:10:50 +0900
【日本生態学会】自然保護委員会の皆さんへ   松田です
コウモリ資料を拝見しました。いくつか質問と意見があります。

  • 資料2で人工洞穴で確認されたキクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、モモジロコウモリ、ユビナガコウモリ、テングコウモリ のうち、絶滅危惧種はコキクガシラコウモリテングコウモリの2種ですね。これらが確認された洞窟数を教えてください。
  • できれば、洞窟の規模別に教えてください。1万個体の中に絶滅危惧種が混ざっているのか、小規模洞窟に住んでいたのかも重要だと思います。
  • 資料1のコウモリリストを見ると、特定地域の固有種(オキナワコキクガシラコウモリなど)のようなものの生息地の人工洞窟はともかく、広域分布の種は限られていると思います。洞窟の場所により、かなり限定できるのではないでしょうか?
  • 1万個体いる場合があるということですが、絶滅危惧種がそれだけいることがあったのですか?洞窟別種別の大まかな個体数規模(1家族、数十、数百、数千などとした推測範囲、たとえば「1家族以上」とか「数十−数千」とか)でもわかれば、各種の保全の必要性がある程度わかると思います。
  • また、1年間に4回調査すべきだという根拠は何でしょうか?種の同定だけならば、その必要はないと思います。また、洞窟の規模にもよりますが、出口での【】捕獲をもっと奨励してもよいでしょう。
  • 種を同定できる専門家を含む調査員が調査するということですが、安全対策はどうしますか?これは「コウモリの会(会長:山本輝正、会員数約420名)」が担うということですか?彼らのどの程度が種の同定が出来る専門家でしょうか?おそらく、危険な洞窟を調査するかどうかで、調査費用(安全対策、保険金)は大幅に違うのではないですか?哺乳類学会員はご存知だと思いますが、迷い込んだクジラの救出は命がけの作業と聞いています。クジラはまだカメラの前でやりますが、人工洞窟全部をやるというのは、はたしてどれくらい安全性が確保できるのでしょうか。
  • また、資料2にある調査洞窟68箇所のうち、今回閉鎖候補となった洞窟はいくつあるのですか?それはたくさん調査された千葉、三重、大阪の閉鎖対象のうちのそれぞれ何%でしょうか?

現時点での意見を申します。
 全国約7000箇所ですか?そのうち崩落危険558箇所(哺乳類学会決議ではもっと多かったような)、森林・農業地域289箇所ということは、7000箇所全部を閉鎖する場合には比例関係を仮定して約3600箇所の調査が必要であり、かつ、調査したうち6割にコウモリが生息していたということは、これまた比例計算ですが、約2400箇所にコウモリが生息していることになります。絶滅危惧種の限られた生息地として人工生息地を保護せよと主張するのならば、そのすべてを保護すべきだとは思いません。
 もう少し調査対象を絞るべきだと私は思います。上記の計算は小学生にでもできるもので、洞窟の特徴と生息条件の抽出などを(森林・農村以外)やっていません。学会としては、もう少し具体的な意見を述べ、調査対象を特定できると思います。資料2の調査をやられているなら、ある程度可能なはずです。
 前回の要望書の議論では、崩落の危険の有無にかかわらず、すべてを閉鎖する動きだと思っていましたが、どうやら当面の閉鎖対象は10%未満のようです。だとすれば、もう少しデータが揃ってから保全すべきところを絞り込んでも、遅くはないと私は思います。
 もちろん、保全上重要であることがわかっている人工洞穴については、その保全を訴えてよいと思います。たとえば、すでに生息地が数箇所しかないIA類の島嶼性のコウモリの住む人工洞穴は、私もつぶさないほうがよいと思います。しかし、一律調査を求めることは、ある程度調査された専門家がいる学会が出す要望書として、私は過剰だと思います。