加藤尚武さんの鬼頭批判について

Date: Mon, 21 Nov 2005 19:48:19 +0900
 私は加藤尚武さんの鬼頭批判を読んでいないのですが、鬼頭さんの反論を読む限り、加藤さんは妥当なことを言っていると思います。以下は彼らの文章そのままではありませんが、私なりの理解です。「中西さんは損失余命などを定義してさまざまなリスクを比較秤量使用としているが、それはできないというのが鬼頭さんの中西批判」「中西さんは等質性のあるリスクを比べようとしているのであって、異質なものまで比較するのではないし、最後は人間が判断しているというのが加藤さんの鬼頭批判」のように見えます。だとすれば、この点では加藤さんのほうが正しいと思います。私は鬼頭さんの社会的リンク論を高く評価しています。Precautionary Principle(訳語を「予防」としなくなる可能性が出てきたので、訳語は保留します)と順応的管理をともに重視する点も鬼頭さんを支持します。それはPPの新たな適用原則となりえると思っています。
 自然科学は普遍性を求めるものですが、それはできる範囲のことであり、かつ、理論体系(モデル)と現実が別物であることは十分弁えるものです(これを混同することを俗にピグマリオン症候群といいます)。当然、中西さんはさまざまなリスクを比較しようとしていますが、それが万能でないことは当にわかっているはずです。客観的な解決の手段として損失余命を提案したのですが、その限界も承知しているはずです。