自然再生事業へのレヴュー(石西礁湖の場合)

Date: Sat, 28 Jan 2006 12:31:27 +1200
○○さん、
 さて、自然再生事業レヴューに石西礁湖を当てはめたものを書いてみました。【】たいへんよく指針をフォローしていただいていると思います。ありがとうございます。【】
 これを全部満たせるような事業は、私自身が全権力を持っていても、できないと思います。指針に極めてよく即していると思いました。
Date: Wed, 1 Feb 2006 19:16:12 +0900
生態系委員各位
自然再生事業レヴューの私の部分(石西礁湖、知床世界遺産)を加筆したファイルを添付します。

石西礁湖 自然再生事業
HP
マスタープランhttp://shizensaisei.com/
【自然再生事業の対象】自然再生事業にあたっては、可能な限り、生態系を構成する以下のすべての要素を対象にすべきである。
恵み豊かな地域共有の海、美しいやすらぎの海、生活環境を支える海、生き物とのふれあいを学ぶ場、豊かな文化のみなもと
1 生物種と生育、生息場所
オニヒトデ対策を重点的に行う海域の選定
2 群集構造と種間関係
固有性の高いサンゴ群集が分布している海域
3 生態系の機能
白化、土壌流入等による攪乱を受けにくい海域
4 生態系間の繋がり
岸よりの砂地、海草藻場などサンゴ群集と隣接した環境との生物的なつながりを把握することも重要です。
5 人と自然との持続的なかかわり
漁業と観光の利用上重要な海域
【基本認識の明確化】自然再生事業を計画するにあたっては、具体的な事業に着手する前に、以下の項目についてよく検討し、基本認識を共有すべきである。
6 生物相と生態系の現状を科学的に把握し、事業の必要性を検討する 
1970年の生物相調査、インド洋西太平洋さんご礁の北限
7 放置したときの将来を予測し、事業の根拠を吟味する
ストレス要因=白化、オニヒトデ、赤土、水質悪化
8 時間的、空間的な広がりや風土を考慮して、保全、再生すべき生態系の姿を明らかにする 
人為的な影響が比較的軽微だったと考えられる1972 年の国立公園指定当時
9 自然の遷移をどの程度止めるべきかを検討する 
(波浪等物理的撹乱状況を推定)
再生すべき自然が損なわれた要因を示す
保全管理の強化 持続可能な利用 サンゴ群集の修復 普及啓発 調査研究
過去の生物相記録、絶滅した種のリストを作る
なし?
【自然再生事業を進めるうえでの原則】 自然再生事業を進めるうえでは、以下の諸原則を遵守すべきである。
海域をまるごと保全する(海中公園MPAの選定)
10 地域の生物を保全する(地域性保全の原則) 
サンゴ群集の修復を進める重要地域の選定
11 種の多様性を保全する(種多様性保全の原則) 
サンゴ礁生物群集(サンゴ・海藻・魚)について調査を行い、それらの生息環境の調査結果と合わせて生物多様性を評価する
12 種の遺伝的変異性の保全に十分に配慮する(変異性保全の原則) 
(サンゴ群集修復に用いる)種苗は石西礁湖周辺のものを用いることを原則
13 自然の回復力を活かし、人為的改変は必要最小限にとどめる(回復力活用の原則) 
石西礁湖の自然再生においては、自然の回復力、自然自らの再生プロセスを人間が手助けする形で自然の再生、修復を積極的に進めます。保全管理の強化と、サンゴ群集修復事業が組み合わさることによって、より円滑なサンゴ礁生態系の再生が図られます。
14 事業に関わる多分野の研究者が協働する(諸分野協働の原則) 
専門家会議を組織、他の研究プロジェクトとの連携
15 伝統的な技術や文化を尊重する(伝統尊重の原則) 
海と関係の深い地域伝統行事(M36し、古くから地域が海に接してきた考え方や暮らし方を再認識する。
16 目標の実現可能性を重視する(実現可能性の原則)
未評価
全体計画において長期目標・抽象的目的(理念)を合意する
1972 年の国立公園指定当時の豊かなサンゴ礁生態系を取り戻す
【順応的管理の指針】 自然再生事業においては、不確実性に対処するため、以下の順応的管理などの手法を活用すべきである。
17 事業の透明性を確保し、第3者による評価を行う
HPにて常に意見を求めている
18 不確実性に備えて予防原則を用いる 
「予防的順応的態度」の明記
19 将来成否が評価できる(期限を区切った)具体的な(短期)目標を定める 
具体性が乏しい。期限未定=環境負荷を軽減し、現状より悪化させない
20 将来予測の不確実性の程度を示す 
言及なし
21 管理計画に用いた仮説をモニタリングで検証し、状態変化に応じて方策を変える 
サンゴ礁の修復事業に関しても事前の十分な調査を行うとともに、事業着手後も自然環境の再生状況を常にモニタリングし、その結果を広く公開するとともに科学的な評価を加えた上で、事業にフィードバックする等、柔軟な対応を図ります
22 用いた仮説の誤りが判明した場合、中止を含めて速やかに是正する 
「施策は多くの場合リスクを伴うので、その説明責任を果たす義務も必要です」
事業計画の見直す時期と方法を明示する
言及なし
【合意形成と連携の指針】 自然再生事業は、以下のような手続きと体制によって進めるべきである。
23 科学者が適切な役割を果たす・合意形成に資する科学的成果を示す
オニヒトデの大発生そのものの防止が困難であり、重点的な保全地域を選定する必要性を合意
24 自然再生事業を担う次世代を育てる
自然教室を開催し、普及啓発施設の整備を進めます。サンゴ礁とふれあう機会の創出や教育機関との連携を推し進めます。
25 地域の多様な主体の間で相互に信頼関係を築き、合意をはかる 
(協議会の組織)石西礁湖の自然再生は、環境省だけでなく関係する行政機関、地域住民、地域で活動を行っている団体、サンゴ礁生態系に関し専門的知識を有する者が共通の認識の下に、互いの連携、協力を密にして行動することが必要です。このため、自然再生推進法に基づき、関係する各主体が参加する自然再生協議会(仮称。以下「協議会」という。)を組織します。
26 より広範な環境を守る取り組みとの連携をはかる 
環境省が行う自然再生事業が関係行政機関の施策と連携したものとなるよう、関係行政機関の協力を得てとりまとめたものです。今後も、関係行政機関の赤土等流出防止総合対策計画や農林水産業振興計画など各種計画、構成員により実施される自然再生事業の計画と連携するとともに、本マスタープランで不十分とされる事項についてはさらなる関係行政機関の参画を得て、総合的な自然再生を推進します。