ジェイコム株事件と進化理論から見た「モラル」

Date: Wed, 8 Mar 2006 19:11:59 +0900
皆様 【】札幌より松田裕之です
 【中略】なお、ついでながら、下記の原稿をバイオニクスという雑誌に書きましたので、紹介します(未刊行のゲラにつき、この場限り)。これまた価値観もろ出しと思われるかもしれませんが。【】
中丸麻由子・松田裕之(2006)進化理論からみた「モラル」とは? バイオニクス2006年4月号58-64 
昨年末に話題となったジェイコム株事件では,企業のモラルが問題となった。ここでは,“進化理論”を援用して,人間の本質を見極めつつモラルとは何かを再確認し,なぜ人はモラルを守ろうとし,モラル違反者への制裁を望むのかを考える材料を提供したい。そして,人には反モラル的な行動をする傾向もあることを示しながら,「モラル」は生物進化の過程で人が獲得したものであることを紹介する。

Date: Wed, 8 Mar 2006 22:21:20 +0900
松田裕之様      3月8日
中丸麻由子さんとの解説論文で、私と大槻久君との仕事を引用してくださってありがとうございます。ただし、内容についてですが細かいことですが、ひとつ気になることがあります。
文章の中で、高い協力の進化を維持することができる評判のつけかたについて
[1]評判の高い相手に協力すると自分も評判がよくなる。
[2]評判の高い相手を裏切ると、自分の評判がわるくなる。
これは正しいのですが、そのつぎに
[3]評判の悪い個体に対して非協力的に振るまうと評判がよくなる、
とありますが、この[3]は不正確です。正確には
[3]本人の評判が高いときに、評判の悪い個体に対して非協力にふるまっても評判はよいままである。
がただしいのです。
細かい話に思われるかもしれませんが、私たちにとっては、これは小さな違いではありません。【】
 つまり、本人の評判が悪いときに、評判の悪い個体に対して非協力にふるまったら、評判がよくなる場合も悪いままの場合もともに、高い協力を維持するルールになります。
私と大槻久君による間接互恵によって高い協力を引き出すことができるすべてのルールを網羅的に探すという計算結果によると、実は、4096通りの中で、8つのルールだけが高い協力レベルを維持できます。
 その中のたとえばStandingという戦略では、「本人が評判が悪いときには、評判の悪い他の個体に対しても協力をすべきで、そのことで、自分の評判を改善できる」というものになっています。これに対して、「本人が評判が悪いときには、評判の悪い他の個体への協力を拒否することで評判を改善できる」というルールもあり、それは東大理論経済の神取さんが徹底的に調べたものですし、また北大の高橋グループが想定しているものです。これらのルールはそれぞれに高い協力レベルを維持することができるものです。
高い協力レベルを引き出すことができる社会規範にはいくつかのタイプがあります。それらの間で共通した面もありますが、違っている面もあります。共通した面は脳の中に心理的に組み込まれている可能性が高いですが、社会によってグループによって違った規範に従わないといけない場合もあるわけで、それは学習によるのではないか、と私は推測しています。
巌佐 庸
Date: Wed, 8 Mar 2006 22:54:16 +0900
巌佐様 皆様 中丸様 【上記】、感謝。今日 ゲラ締め切りです。今から駆け込みまにあうか。 松田