Date: Thu, 27 Apr 2006 16:19:18 +0900
○○さん
 【我々】はいつも、「人間の健康リスクは既に十分低く下げている。しかし、生態リスクは1世紀前に比べてずっと高くなっている。だから生態リスクを問題にしよう」といっています。
 しかし、生態リスクをさげるために、化学物質の濃度基準値をさらに下げることにつながるかといえば、はなはだ疑問です。人間で許容できる濃度よりもさらに低い濃度を生物のために課すのでしょうか?
 たしかに、TBT【トリブチルスズ】インポセックスなどは対策が必要でした。「もう手遅れ」とNHKで話した是非はともかく、これは明らかに生態リスク対策が必要な実例でしたし、彼らの努力によって比較的速やかに対処できたと思います。しかし、最近環境省が進めている、ノニルフェノールや亜鉛など、私にはとても考えられない規制です。
 土地開発、河川や海岸改修などで生態系が大きく損なわれていることは疑いようがありません。乱獲もあります。しかし、いま規制しようとしている化学物質の生態リスクが果たしてそんなに大きなものでしょうか?
 生態リスクを重視する環境化学者にとって、健康リスク対策はもうだいたい終わっていますから、生態リスクは自分たちの研究の社会的意義を認めさせるのには格好の論拠です。そのような人々にとって、他の生態リスク因子の研究と社会的意義を巡って競合することは、将来大変なことになるかもしれません。
 産総研に来て、中西さんがいかにまともな人であるか(自己否定も辞さないで正論を述べる)を改めて感じました。あなたは【化学物質だけでなく、】総合的な生態リスクに取り組めるのですから、自信を持ってください。【】
 中西準子雑感327-2005.12.19「環境省も変わりましたね」をご覧ください。これを素直に受け止められるかどうかで、だいたい評価がわかります。
 それでは、またよろしく。このメールへのお返事ご無用です。