リスク管理から見た大連立政変

 福田自民党総裁小沢民主党党首が「密室」で会談し、大連立で合意し、民主党の党内合意が得られずに破たんした今回の「大連立政変」は奇妙なことだらけだった。昨日までさっぱりわからなかったが、今朝の報道で少しわかったことが二つある。

  1. 今総選挙に持ち込んでも、民主党は候補者擁立準備不足で勝てない
  2. 大連立は参院選直後から渡辺恒雄氏と中曽根康弘氏により構想され、福田、小沢両氏に打診し続けていた。

 民主党が勝てないというのは素人ではわからなかったが、おそらく正しい読みなのだろう。だから一概に全面対決できなかった。しかし、よく言われているように、総選挙に持ち込むのが参院で大勝した民主党の正道であり、衆院で負けた後で初めて、大連立は現実的選択になるはずだ。今それを目指すのは不戦敗である。選挙に絶対はないし、前首相がこけたように、首相が解散するとは限らないのだから。
 二度目の党首会談後、小沢氏が民主党に大連立合意を持ち帰り、党内合意が得られずに破談になったとき、私は小沢氏が福田首相を完全に出し抜いたと思った。連立を持ちかけた首相がピエロにみえ、自民党民主党に頼るしかなく、民主党に袖にされては自民党に為す術がなく立ち往生したことが白日の下に晒され、このまま総選挙に持ち込まれたはずだ。時期を稼ぐだけなら、小沢さんの手腕ならいろいろ手があった筈だ。
 小沢氏個人が信念で大連立に合意したのはまだよい。しかし、党内合意が得られないことも想定すべきだった。それがひと通りの未来を予測しないリスク管理というものだ。
 結果論からすれば、党内合意が得られないなら、福田さんに個人的に謝って破談になったで小沢党首はすましているべきだったと思う。それは小沢氏にとって次善の結果かもしれないが、それなら自民党を追い詰めていた。総選挙でも、福田首相憲法解釈などで譲歩して大連立を希望したことは、民主党に有利に働いたことだろう。いよいよ政権交代が誰の目にも現実味を帯びたはずである。
 しかし、小沢氏が辞意を表明することで、印象は完全に逆転してしまった。
 リスク管理からいえば、小沢さんが党内説得に自信をもち、首相と合意したまではまだ良かったと思う。しかし、党内合意が得られない場合の対処を準備していなかったとすれば、残念ながら党首失格である。実際に起きたことを想定していなかったのだから。
 解散権は首相にある。辞意表明したときとしないときでどちらが総選挙に有利かは自明だろう。たとえ総選挙で負けても、参院で多数派である限り、大連立は常にできることだ。