環境用語解説 生物多様性条約、共同管理、予防原則 科学的リテラシー

生物多様性条約、共同管理、予防原則の内容にかかわるご意見、ありがとうございます。
 生物多様性については出典が明示されていないのですが、ご指摘の通り、3つのレベル(遺伝子、種、生態系)での多様性を保全すると謳っているところは重要です。また(普通の解説にはないかもしれないが)アメリカが未加入という点も、アジア視点COEとしては重要ですね。
 後日、遺伝子情報利用の権利と知的財産権の観点については、一度講義をどなたかにお願いしたいです。自由貿易生物多様性の「矛盾」なども聞きたい。自然科学者は耳学問に終わりますが、このようなことを専門にしている人がいるでしょうか?
 Co-managementを 共同管理 でなく 協同管理 と表現すべきかということですが、著者の牧野さんのご意見を尊重したいと思います。漁業の共同管理については、彼は国際的に著名な日本の第一人者です。

 予防原則の定義ですが、リオ宣言第15原則の表現はが予防原則の唯一の定義ではありません。ワシントン条約では現在ほぼ上記の表現になりましたが、以前は「深刻な、あるいは不可逆的なダメージがある時には」の代わりに「不確実性を避けるために」とだけありました。
 予防(precaution)と未然防止(prevenstion)の訳語については、最近ますます懐疑的です。予防注射は後者ですが、この誰もが知る日本語が変わるとは考えられませんから。英語と日本語はできれば1:1であってほしいですが、1:多ならまだよい。上記の例ではPrecautionだけをさす日本語はないのです。
 日本政府の見解としては、「因果関係の解明された」危険性を避けること(未然防止)が原則で、それ以外の予防原則の適用については懐疑的であるとも聞いています。ただし、どの程度の証拠が必要かは別で、もちろん、両者は重なりがあるでしょう。 私は IPCC第4次報告によって「温暖化」が「断定」されたことをもって、気候変動対策は予防的措置ではなくなったと言っていますが、まだ異論が完全になくなったわけではないでしょう。

 リテラシーとは識字(能力)の意味ですから、私も「科学的知見を(単に知識や結果の受け売りでなく根拠を理解して)読み取れる能力」(科学的読解力、「識理」と一度訳したが誰も追随しなかった)という意味で使っていました。しかし、ネットで検索するとほとんど先日の定義*1が出てきますね。その定義の前に単純に「科学的知見を理解する力。」と加えてもよいかもしれません。

*1:自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解|し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論|を導き出す能力のこと。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05071301/001.pdf