想定外は悪いことか

Date: Thu, 5 Jan 2012 06:38:55 +0900
 私自身は、社会における研究者・技術者の「信用・信頼」が大きく低下したという実感はありません。もともと、研究者の政策提言が常に正しいとは限らないというのが私の持論でした。【】
 原発事故そのものより、事故処理が決定的にまずかったと【】言いました。周囲の学者は共感してくれていますが、この意見はほとんど報道されない。「想定外では済まされない」の一言。想定外(予感しても対策を立てられないこと)がないというのは、それこそ人間と科学を過信した傲慢な考えです。思いつくことの中で、対策が取れないことは日常生活でも山ほどあります。だからこそ、原発事故には決死隊が必要なのだが、その体制と覚悟が【】ない。
 原発推進や防災の当事者たちよりも、そうでない学会のほうが反省を口にします。水産業は被害者の側だが、アカデミア全体として反省が必要という主張にしました。
 気象学会が個人的分析を発表することの自粛を求めて【物議をかもしました】。海洋学会はチームとして取り組む姿勢を示し、現に取り組んでいます【】。実は組織対応を維持する点では大差ないのだが、この二つの声明は、受け手に与える印象がまるで違います。
 船や飛行機では船長機長の命令は絶対です。有事にはそれが必要です。周囲も勝手なことを言うべきではありません。しかし、知恵は出し合うべきであり、下船したらいろいろな意見が出てくるでしょう。
 被災地の瓦礫【】を受け入れたのは【】都知事だけ、京都市長が大文字での宗教行事までびびったのとは大違いとは皮肉な話です。
 野生生物への放射線影響を声高に言う人もいますが、【】チェルノブイリでも逆に避難区域は動物の楽園になっています。福島ではいのししの獣害問題が発生するでしょう。【】真贋を見極められないで原発の危険性を訴えるのが「社会への貢献」と勘違いするのは禁物です。
 【】基準値以下の濃度の公表で風評被害が起きるのも現実です。隠すことは逆効果だが、公表すればよいというものではない。
 【】しっかりと信念を持ち、ぶれない主張を丁寧にしていくことが学者の役目だと思います。