Future Earth 日本サミットでの議論

「野生動物の殺傷を減らす」べきかどうかについての論点を私なりに説明します。

  1.  生物多様性条約の3原則は、①生物の多様性の保全 ②生物資源の持続可能な利用 ③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分です。 野生動物も生物資源であり、その持続的利用は推奨されていると思います。しかし、条約の当初の理念と実態が乖離することは歴史的にありえることですし、Future Earthのような民間組織が国際条約の原則を超えた理念を掲げることもあり得ることでしょう。
  2. 野生動物には(獲る漁業の)水産物も含まれます。陸上野生鳥獣(+両生類)を利用すべきではないという見解よりも強い見解ですが、Veganならそれは承知でしょう。

  3. 日本を含む世界では、陸上野生鳥獣は駆除されています。ニホンザルだけでも年間1万頭以上が【捕獲】されている*1。【外来種扱いの】ノイヌノネコも駆除されています。それを殺傷すべきではないという意見はありますが、現実的ではないでしょう。野鳥を捕食するノネコの扱いは欧米でも「動物愛護派」と「野鳥愛好家」の間での論争の的です*2。そして、欧米の言説も多様であり、時代とともに変化してきたし、これからも変わり続けるでしょう*3

  4. スリランカでは、ゾウの】駆除も利用も非合法ですが、村落を襲うゾウは実際に駆除されています。住み分ければよいといっても、駆除しなければ彼らは居住地や農地に侵入し、人身被害さえ起こします。知床のウトロでは集落のほうを電気柵で綿密に囲っていますが、それでもヒグマによる被害はゼロではなく、札幌では広大な市街地がヒグマの出没地域になりつつあります*4。欧米の都市ではそれほど聞きませんが、インドでも大都市に「人食い虎」が出没するようです(ヒンズー教徒はそれを許容しているかもしれないが)。むしろ捕殺することで彼らも人間を警戒し、共存しやすくなるでしょう*5

  5. 捕殺するなら利用し、生態系サービスとして経済価値を持たせたいと私は考えますが、それが乱獲につながるとする意見もあります。【】利用の是非は具体的にその種が置かれた状態にもよるでしょう。しかし、一般論として殺傷を減らすというのはかなり強い意見だと思いました。それは私が目指す道ではありません。 

12月の「Future Earth日本サミット」という非公開行事で参加者全員に配布された文書に「 野生動物を殺傷することなく人と動物が共存するにはどうしたらよいか?」という「課題」が載っていました。それは地球研のサイトにある文書からも確認できます。しかし、これはFuture Earthの見解ではないという【後日の】説明でした。