獣害問題に背を向けるワンヘルス運動とは

Date: Tue, 9 Feb 2021 10:45:20 +0900

 最近、コロナ禍の中で野生動物の利用や取引一般を削減しようという主張が増えていることを危惧しています。注意すべきことに異論はありません。しかし、だから利用削減というのは、利用する側の実情を無視した意見と思います。 研究者が熱帯林に調査【に行け】ば双方向の感染症伝達に注意が必要であり、コウノトリの野生復帰でも対策が必要です。野生獣肉の生食は厳禁です。実際にそのような対策は取られてきました。【】

 獣肉利用が必須な途上国だけでなく、先進国も含め、利用しないことでかえって獣害問題が深刻化し、それが感染症問題も複雑にしています。マダニとシカだけでなく、豚熱と野生イノシシの関係も指摘されています。
 獣害問題(Human-wildlife conflict)と獣肉利用(Wild meat)など、野生動物と接する人間社会の問題解決とセットでなければ、ワンヘルスは成功しないどころか、地元の解決を妨げる要因にすらなりえると思います。
 【ワンヘルス運動が】獣害対策と適切な利用と取引を促進する新たな常態を目指すという趣旨ならば良かったと思います。実際には、象牙を筆頭に、野生動物利用全般を削減する運動になっていると思います。【】

・人とクマは友ではなく、互いに恐れあうことで共存できる。
・人と野生動物の接点は必ずある。すみ分けというだけでは解決しない。
・人は生態系の一員であり、野生動物を利用することも、野生動物に利用されることもある。その関係を断つことが人と自然の共存ではない。

 

  • *110月1日からのカザフスタンMAB委員会・金沢大学主催のオンデマンド研修で「A new normal between human and wildlife as a part of the biosphere」を教材提供し、11月6日に「野生生物と社会」学会公開シンポジウムで「人と野生動物の利用しあう関係」と題して基調講演させていただきました。視聴された方々から、これらに対するご質問、ご意見をお聞かせください。このBlogのコメント欄にいただければ幸いです。

*1:2021/11/12加筆