最近のIPBESのポスト生態系サービス論

On 2024/04/17 14:12

  •  2010年頃に生態系サービス(ES)論を聴いて不満だったのは、森は豊かだが利用していないとか、Underuseという日本の主張(および花粉症や獣害のような負のサービス)がES論では表せなかったことです。
  • その後、NCP(Nature’s Contributions to People)になり、「自然」というCompartmentをESの前に入れてStockが豊かでFlowがないことは表現できるようなり、Dasgupta報告書では(馬奈木さんも引用して)自然資本を重視し、ES概念のNature‘s benefitをNature’s contributionに変え、都市も含めた二次的自然を重視し、Living in harmony with natureを2050年長期ビジョンに据えるなど(2010年に自然との共生を日本が唱えたときこの英語を使いましたが、それより、現在のIPBES文書にあるLiving in harmony with mother earthのほうが英語表現は元祖のようです)の点は、私は歓迎しました。
  • しかし、IPBES(2022)価値報告書SPMを見る限り、せっかくの調整サービス論がほとんど消えてしまったように見えます。Pricelessな価値も重視するのはよいですが、あまりにも多様化してしまい、グリーン経済の強みが生かせないこと、国際条約の共通認識が人間中心主義から外れてしまうことを危惧しています。