JST異分野融合ワークショップ「生態学と経済学の融合」

Date: Thu, 8 Dec 2005 09:37:48 +0900
○○さん曰く[eco-eco-f:00037]

改めて,今までのメールを精読していますと,やはり価値論などに対する意識の違いを痛感いたしました.もっと根本の原理的な部分の共感が経済・生態双方の学者にとって必要なのだと考えずにはいられません.

 私が【ワークショップ】最終日に言ったのは,経済学も実証科学として市場価値を議論するのだが、(環境)経済学者自身が「金がすべて」と思っているわけではなくて,(他人の成功を自分の喜びとすることも含めて)さまざまな効用を理論体系に組み込もうと努力しているのだということです。
 それは生態学者も同じです。生物多様性へのさまざまな思いはありますが、実証科学として語れることは限られています。それは他の分子生物学者などでも同じです。
speculationのない科学に発展はありません。しかし彼らは科学的成果と自分のspeculationを常に区別して語る癖がある。正直に言って、これは生態学者である私も学ぶべきだと思います。論文ではともかく、(市民向けなどの)講演で私はspeculationという言葉をほとんど使わないが,分子生物学者以上に,生態学者の講演にはspeculationが多いはずです。その点はもう少し自分で注意するようにしたい。
 しかし、speculation自体が科学(の成果や言説)なのではありません。今回の集会で私が感じたのは、むしろ何を守りたいのかという「思い」の部分は,生態学者と経済学者に特に違いがあるわけではない(学界全体としてはどちらも千差万別)ということです。しかし、当然ながら科学的実証に持ち込むには,それぞれの方法論や学問体系がある。互いの学問体系を理解し合えば、相互に協力できることはまだまだあるだろうと思いました。
 率直に言って、CVM自体が経済学の学問体系の中で実証科学としてどれだけ生き残れるかは,門外漢ながら私には疑問です。もう少しお手並みを拝見します。しかしそれは、私が価値とみなしたいものを経済学の体系に持ち込もうとする試みの一つであることに疑いはありません。
 特に○○さんの仰る「価値論などに対する意識の違い」があるとは思っていませんが,なおご意見がありましたらお願いします。
Date: Thu, 8 Dec 2005 10:09:11 +0900

ただ,「外部性」ということに関してはお返事をいただいてないように感じます.松田先生も含めて,市場の価値には乗ってこない「外部性」という経済学的概念でお話をいただいているようには思いません.

 素人発言ですが、外部というのは市場内経済があるから存在する概念で,「外部負経済の内部化」(生態学事典では,外部経済と載っている)という試みがあるのだと思います。市場取引と全く無関係のままで経済学的に実証・評価される概念とは思っていません。
 ただ、市場に直接乗らない価値も論じたいという試みだと理解しています。その意味では、「思い」は共有できる。
 間違いでしたら訂正ください。