リスク分析論の質問

Date: Sat, 22 Dec 2007 15:50:05 +0900

12.21リスク分析論の質問
Q:外来種は定着した個体数を1/10に減らすよりも1/10に減らしてから根絶させるまでに多大な努力が必要とのお話がありました。一方、絶滅危惧種は、個体数が一定以下になると保護しなければ急激に減少して簡単に絶滅に至ります。この違いは何でしょうか?絶滅危惧種もその土地に古くから生息していて、自然淘汰に耐えてきたものと考えられます。外来種が【侵入先の環境に適して個体数と分布を拡大している】最中であるとしても、その時間に大きな差があります。絶滅危惧種の生活環境が悪化している点は理解します。だとすると、地球の長い時間の中で、地球上の生物は強い外来種だけになっているべきではないでしょうか。
A:たいへんよい質問ですね。私は以下のように考えています。
 まず、絶滅危惧種の一部は人為的な影響によって保護しなければ絶滅または回復が極めて困難になっています。「個体数が一定以下になると保護しなければ急激に減少して簡単に絶滅に至ります」という記述が当てはまる種はそれほど多くなく、個体数の多寡に係らず減り続けていたと考えられます。他方、外来種も全部が定着するわけではなく、定着して在来生態系に大きな影響を与えるのは一部の種です。よって、減り続けている絶滅危惧種は保護が必要であり、少数の侵入個体から増えた侵略的外来種は減らした後も根絶までには一層の努力が必要なのです。絶滅危惧種が減った後で減少要因(乱獲や生息地破壊など)を取り除いても、直ちに増えるとは限りませんが、かつて激減していたカモシカニホンジカやカワウ(さらにはマガン)など、保護した後で個体数を回復させた種もあるのです。