Date: Mon, 11 Sep 2006 20:34:54 +0900
○○様
>川を行き来する魚は、アユに限った話ではありません。
これは国交省のサイトにも説明されています。漁業資源だけでもないと。
ちゃんと意識すれば、【アユの遡上機会確保も】太郎衛門の事業計画に十分反映できるはずです。それができていないのがいけない。
川の自然を最もよく知るものは、ボランティアではなく、現場の漁業者だという認識が重要だと思います。
くぬぎ山自然再生事業の例ですが、以下のような原稿を準備中です。ご参考まで。ここでも、その環境を利用し続けるものの存在が重要だという認識です(これは私の意見だけでなく、くぬぎ山にかかわるある生態学会員の意見でもあります。彼は、何でも行政が買い上げてボランティアで維持しようとするのは間違っていると言っています。同感です)
くぬぎ山:行政は、散在する公有地化された土地から自然再生事業を進めようとしています。すなわち、事業対象地域152haのうち117haの現存する緑地を特別緑地保全地区に指定し、地権者の希望に応じて買い入れることにより、公有地化を目指しています。残りの地域は近郊緑地保全区域として利用を制限する計画です。そして、将来的には全域に網かけをして、公有地化された土地に対して森林再生を行う計画です。
自然保護団体や緑地保全の行政担当者は、公有地化された土地に対して森林再生などの事業を行う自然再生事業を想定しています。しかし、指定区域のほとんどが私有地で、もともと農用林として使われてきた経緯があります。その一部は、農業者による雑木林管理、落ち葉掃きが現在でも行われ、管理されています。また近年、若手中堅農家や年配の有力農業者の一部は、放置された雑木林を地権者の了承を得て積極的に管理を行う活動を行っており、落ち葉を用いた堆肥による循環型農業を目指しています。農家でNPOを作って雑木林の管理を行う機運もあります。この地域は大都市の近郊にありますが、後継者問題もそれほど深刻な状況ではなく、農業経営として安定した専業の野菜農家がたくさんあります。
逆に、二次的自然を公有地化すると、その管理負担が行政に重くのしかかってしまうことがあります。むしろ地権者の農家が、従来のように農用林的に使うことを前提に自然再生に相応しい形で管理していくことができれば、行政の管理の課題を解決する一つの方策になることでしょう(第5章参照)。同じことは、漁業における自主管理(共同管理)にもあてはまります。
Date: Mon, 11 Sep 2006 15:11:04 +0900
○○さん
ちなみに、このことは、私有地を前提にした時の自然再生に対する行政のかかわりのあり方と展望を論じる格好な材料だと思います。
これは知床の漁業でも強調したい点です。欧米でも最近「GovernmentからGovernanceへ」
(○○さんの表現)、漁業でも一方的な管理から漁業者とのCo-managementが見直されつつあると聞いています。 これは日本(やアジア諸国など)では当たり前のことなのですが、市民の自由とそれを管理する国家という枠組みから見ると、新しいことなのだそうです。
結局、漁業でも政府の管理だと、監視に膨大な努力が必要です。それが自由参入を制限した日本の漁協制度の相互監視の下では(○○は監視できないが)十分効率的に機能するという指摘があるときいています。*1
*1:補足:日本の国立公園はほとんどが民有林で占められ、米国の国立公園制度とは異なると聞いたことがあります。欧州でも、スイスのアルプスは民有地でありながら風光明媚な観光資源として維持されている。何でも国有化して守ろうというのは考え物です