生態学会企画シンポジウム 繁殖干渉 

Date: Sat, 15 Mar 2008 00:23:24 +0900
 今日は極めて興奮させられる企画集会にコメント者として招いていただき、ありがとうございました。
 本日のコメントを補足します。
 安井さんの干渉型競争の一つとしての繁殖干渉という位置づけは明確でした。新たな流行が生まれる息吹を感じました。この会場にも、さまざまな分類群のかたが参加し、満員であることが、魅力を物語っていると思います。
 繁殖干渉は種内の性的干渉が前提ということでしたが、求愛 交尾 受精 雑種形成(不妊化)のなかで交雑前の干渉が多いとすればそうでしょうが、雑種や不妊化による繁殖干渉の場合は必ずしも種内干渉は前提ではないとおもいますし、植物のタンポポオナモミの例は種内干渉はないと思います。
 アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシの繁殖干渉の実験は明快で面白かったです。一つ興味があったのは、ヨツモン♂やアズキ♂が同種♀にも産卵阻害するかどうかも知りたいです。
 高倉さんの「雌が異種のオスからの交尾を拒否するのにコストがかかる場合には繁殖干渉はなくならない」という結果は常識的に納得できますが、個体数変動も考慮していないかもしれないと思いました。絶滅する前には淘汰圧がきわめて強くなり、かなりコストを払っても交尾拒否が進化するのではないか?ただし、不妊化でなく雑種をつくるばあいには、種は絶滅しても遺伝子は残るのですから、必ずしもそうではないかもしれません。また、性淘汰理論では突然変異にバイアスを考慮すると結果が変わるという巌佐さんらの研究がありますので、それも興味があります。
 繁殖干渉は少数派不利の頻度依存淘汰ですから、絶滅しそうになってからどのような保全プランが考えられるか、すぐにアイデアがありません。外来種で、捕食や寄生(病気)の指定は多いが、タンポポのような繁殖干渉がないというのは、その注目度が低いというのではなく、対策の立てにくさもあるかもしれません。ぜひ、対策のアイデアもお願いします。
 また、タイワンザルは特に繁殖干渉を起こしてはいないと思いますが、雑種形成が問題となった指定種です。ニホンジカスコットランドではアカシカと交雑する外来種ですが、過密に耐えるため大問題になっているようです。
 タンポポについては、2002年に中山(勝川)木綿・瀬野・松田がJ.Theor.Biol.に数理モデルの論文を出しました。このモデルでは、西洋タンポポと関西タンポポが共存するケースは出てこなかったと思います。
 資源消費型競争だけ、繁殖干渉だけなら共存するが、両方あると排他的に共存できなくなるという話は面白かったですが、種Aだけ、Bだけ、AとBの共存の3状態とも安定になる場合も考えられると思います。
 不安定共存が起こるという岸さんと西田さんの話は聞き取れませんでしたが、頻度が振動するのか、同期して密度が振動するのかに興味があります。岸さんの実験では頻度が振動していたように見えましたが、少数派不利ですから大変なことが起きているようです。
 最後に少数派不利の数理モデル外来種赴任中の例で私の新刊「生態リスク学」で紹介していますので、興味あるかたはどうぞ。
 大変面白いシンポジウムをありがとうございました。