Date: Sun, 23 Nov 2008 17:34:41 +0900
拙著(久々の縦書きの単著)を紹介します。
NTT出版やりなおしサイエンス講座7(編集委員:村上陽一郎、鬼頭秀一、長谷川眞理子ほか)『なぜ生態系を守るのか:環境問題への科学的な処方箋』(目次、関係資料などはhttp://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2008/NTT.html)
扱っている対象は下記のとおりです。グラフや計算機実験を追体験できるよう、上記サイトからExcelファイルが落手できます(訂正も載せる予定です)。
主なキーワード:マグロ、サバ、クジラ、シカ、ヒグマ、トド、マングース、カワウ、マガン、知床、屋久島、渡島半島、奄美大島、竹生島、あわら市、中池見、亜鉛、ダイオキシン、植物レッドデータブック、海洋保護区、ITQ制度、漁業の自主管理
「不都合な真実」とはアルゴア氏の著書名ですが、上記の諸問題を考えていく際に、最近、科学者と社会の考える「不都合」が逆向きと感じることがしばしばありました。学者と警察は罪なもので、問題が大きいほど目立ちます。私の学生が大きな環境影響があるのではないかと仮説を立てて検証を試みたとき、意外と影響が小さいという場合がありました。これは仮説を立てた研究者にとっては「不都合な真実」ですが、社会としては安心できる結果です。それに対して、アルゴア氏の「不都合な真実」とは、社会にとって容認できない問題という意味でしょう。私だけが強く主張している「不都合な真実」の例も上記にあります。しかし、科学者にとって都合のよい「検証不足の結果」に基づく例もあります。どの程度確かなことか、その対策がどんな副作用を及ぼすかを理解する市民(とマスコミ)の「科学的リテラシー」が問われます。とはいえ、実証されるまで何もしないということでは、予防原則に基づく対策は立てられません。
自分の研究結果に科学的に確信がもてても、その対策を社会で優先すべきという確信は一人ではなかなかもてません。逆に、皆が指摘しても本当に重要とは限りません。拙著では、実際に問題となっているさまざまな課題への取り組みを紹介すると同時に、解を見出す中で得た「私なりの処世術」を記しました。皆さんの感想を聞かせていただければ幸いです。
重ねてお知らせします。下記のシンポジウムへのご参加を歓迎いたします。五箇公一さんの「カエルツボカビ症でカエルは滅ぶのか?」の内容はリハーサルを聞いて衝撃的でした。
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2008/081212COE.html
日時:2008年12月12日(金)13:00-17:00
グローバルCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」シンポジウム
環境問題における「不都合な真実」