12月12日 生態リスクCOE 公開シンポジウムのお知らせ

Date: Wed, 05 Nov 2008 17:08:06 +0900
わがグローバルCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」では、国連大学高等研究所と共催で、下記のシンポジウムを開催します。皆様のご参集をお待ちしています。
 9月14日の朝日新聞社説「魚と生態系―海を空っぽにするな」は下記の私の講演と重なるものがあります。「各国は海洋法条約にもとづき、200カイリ水域で魚種ごとに漁獲枠を設定している」と指摘して改革の必要性を訴え、「いまの制度では、総量だけを規制している。早い者勝ちなので、小さな魚まで根こそぎとってしまう」とし、他国のような「漁船ごとにあらかじめ漁獲枠を割り振る制度」と「漁獲枠を売買できる制度に注目」すると述べています。他方、「北海道・知床では、ユネスコの審査にあたって、「生態系を守るための持続可能な漁業」と評価」される自主管理漁業があるとし、「内外の好例を生かす知恵をしぼり、日本が新たな近海漁業のモデルを築き、同じように多様な魚種を抱えるアジア太平洋地域で先導役を担うこともできる」と結んでいます。このようにアジアの先例となる環境政策提案に資することが我々COEの使命です。他方、上記社説では「(乱獲で)海が空っぽになる」という学説を紹介していますが、世界水産学会議でも議論されたように、この主張はかなり誇張されたものであり、学界では見直しが進むでしょう。このように科学的に冷静な認識をもち、妥当な政策提言に繋げることが問われているのです。

グローバルCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」シンポジウム
環境問題における「不都合な真実
主催:横浜国立大学
共催:国立環境研究所、国際連合大学高等研究所

日時:2008年12月12日(金)13:00-17:00
場所:国連大学ウタント国際会議場

開催趣旨: 洞爺湖サミットでは、環境問題が最重要政治課題となりました。環境問題の深刻さを科学的に立証するには時間がかかり、社会が対策を立てることはしばしば遅れがちです。それは地球温暖化だけではありません。水産資源の枯渇、バイオ燃料*、外来種など、さまざまな問題にも当てはまります。また、里山のように、過疎化が進むことで自然の多様性が損なわれる問題も広く知られるようになりました。特に人口増加と経済発展途上のアジアでは、さまざまな環境問題がますます深刻化しています。他方、環境問題には不確実性がつきものであり、科学的見解が必ずしも正確に社会に伝わらないことがあります。不確実な将来予測の中で科学者が社会にどう発言し、社会はどのような政策を採るべきなのでしょうか。2010年生物多様性条約名古屋締約国会議の主催国である日本は、これらを踏まえた超長期ビジョンと世界戦略を明確にする必要があります。横浜国大・国立環境研COEは、経済発展と調和した一定のリスクの受容、利害関係者自身の共同管理、予防原則の事後検証を既存の世界標準に提案する「アジア視点」にたってこれらの環境問題に取り組んでいます。本シンポジウムでは、こうしたアジアの視点から、環境問題の実態を科学的にわかりやすく説明し、市民が持つべき科学的リテラシーを培う一助として、近未来の環境戦略をともに考えたいと思います。

議事次第        司会 藤原一繪(横浜国大)
13:00- 飯田嘉宏 (横浜国大学長) 開会挨拶
13:05- 伊藤公紀 (横浜国大) 気候変動問題のセカンドオピニオン
13:35- 松田裕之 (横浜国大) 日本と世界の水産物利用の未来
14:05- 藤江幸一 (横浜国大) サステイナビリティとアジアのバイオマス利用
14:35- 休憩
14:55- 武内和彦 (国連大学副学長) SATOYAMA論はアジアに展開できるか?
15:25- 五箇公一 (国立環境研) カエルツボカビ症でカエルは滅ぶのか?
15:55- パネル討論「環境問題におけるアジア視点とは」 嘉田良平(座長)、伊藤公紀、松田裕之、藤江幸一(以上横浜国大)、五箇公一、江守正多(以上国立環境研)、武内和彦(国連大学
16:55- 有馬眞 (横浜国大・環境情報研究院長) 閉会挨拶
17:00- 閉会