報道されないワシントン条約の顛末

Date: Sat, 17 Apr 2010 17:05:00 +0900
 昨日のワシントン条約報告会を聞いていて、報道では目にしない、私にとって重要な点がいくつかありました。
・今回、日本政府が水産資源の附属書掲載にすべて反対し、実際に掲載を阻止した。その「成功」は、途上国の支持を直接集めたことが大きい。「途上国の票をお金で買ったような」報道が目立ちましたが、これは反捕鯨団体がよく使う手で、途上国の主体性を蔑視するものです。彼らにとって、途上国は主体的にものを考えて行動する存在ではないのでしょう。
・日本が(1)附属書Iへの掲載は、国連海洋法でも保障されている水産資源の持続的利用と持続的開発をおこなう権利への侵害である、(2)附属書Iに掲載されても自国内に有望なマーケットをもつ先進国はマグロ漁を継続することができるが、自国内に大きな市場をもたず、輸出に依存している途上国が存在する以上、マグロ資源の有効利用とはいえず、「不公平」な措置であるなどと指摘した点はほとんど報道されていない。日本のこれらの主張は途上国に説得力があったのでしょう。
・事前報道ではEUも大西洋クロマグロ掲載に賛成と報じられ、多数派を占めたように見えたが、よく見るとEUは修正案を出していて、もとのモナコ提案には賛成とは言えない。そのまま決議に入れば2/3を占められないことは、後から考えれば当然のこと。報道はよく見ていなかったのでしょう。単純過半数を占められなかったのは日本などの途上国説得の成果だが、すんなり議決されないと予想しなかったのは世界の報道の見込み違いでしょう。
・そのEU修正案は日本の以下の批判に論理的に答えられないお粗末な代物でした。(a)なぜ、2011年5月まで発効を延期するのか、(b)CITESの規約上、附属書I掲載種をいきなり附属書から削除することはできず、削除するにしても一度附属書IIに降格してからということになっているが(削除に含みを残した修正案では)この点はどうなるのか。EUは、この質問に明確に答えなかったという。それならば、はじめから附属書IIという修正案のほうがわかりやすかったはずです。要するに、EUは域内マグロ漁業国に妥協した不合理な(実際に採択されてもどう実施してよいか不明確な)修正案を出してごまかしただけだったのではないか。
・会議の状況は時々刻々とさまざまなネット上で紹介されていたが、不正確なものが目立った。たとえば、チリは、『資源の乱獲』と『絶滅の危機』は異なる概念だと主張したのであり、これはモナコ提案への反対表明だった。

Date: Mon, 12 Apr 2010 12:05:32 +0900
 先週から、今度は日本が生物多様性条約議長国とはけしからんという八つ当たりのようなメール議論があって、それに対応しています。さらに報道まで。シーシェパードを引用するとは、JapanTimesも落ちたものです。
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20100408f1.html
 良くも悪くも、ワシントン条約の結果が現在の世界標準と考えるべきです。自分の意見にあわないからといって、議長国の資格がないというのは筋違い。議長国を侮辱するのは、相手の品格の問題でしょう。もしCITESでマグロが掲載されていれば、反対運動をしていた日本に議長国の資格がないというのは、まだわかりますが。CITESの対立の構図を不必要にCBDに持ち込もうとするのは環境団体の側なのでしょう。その結果、CBDも対立の構図で終わって、彼らが喜ぶのですかね。「自分が正しい」ということにご執心でも、自然を守ることはできません。合意して実行することが大切です。迷惑千万な環境団体と報道です。