生態系サービス概念の定着度

Date: Sun, 10 Feb 2008 23:57:42 +0900
農水省日本学術会議に答申したhttp://www.maff.go.jp/work/0-1.htm「農業及び森林の多面的な機能の評価に関する日本学術会議からの答申について」の答申書http://www.maff.go.jp/work/toshin-18-1.pdf に以下の記述があります(漁村と水産業の多面的機能については、ここまで踏み込んではいなかったかもしれませんが)

2) 環境経済学等の方法による評価 地球的規模の環境破壊の進行に伴い、環境保全のための経済学的研究の必要性が増し、新たな分野として環境経済学が生まれている。この分野では、人間にとっての環境財・環境資産に関する研究、自然にとっての、人間の営為によって発生した正、負の財・サービス及び資産に関する研究が行われ、森林に対する経済学研究としては、従来の林業経済学とはなる新たな展開であるといえよう。森林の多面的な機能は、結合財、結合資産として、環境経済学研究での新たな価値財、新たな価値を持つ資産と位置づけられる。

とあり、実質的に生態系サービスの評価が試みられています(私自身は学術会議の答申として、Peer Reviewを経ていない見解を答申したことに強い違和感を持っていますが)。そこには下記のような言及もあります。

以上のような困難にもかかわらず、環境や森林の貨幣価値評価を実施した例は内外に存在する。林野庁は、おもに代替法を用いて森林の公益的機能の貨幣評価を数度にわたり試みている。国連による、いわゆるグリーンGDP(国内総生産)もそのような評価の一例である。すなわち、国連は、従来の経済分析に用いている国民経済計算では経済活動が環境に与える悪影響を考慮していないため、「環境経済統合勘定(Integrated Environmental and EconomicAccounting )」を提案した(1993 年)。経済活動に伴う環境の悪化(外部不経済)を自然資本の損失と考えて貨幣表示し、公害などの発生産業の帰属環境費用を計算に加え、純生産から控除して評価する方法(環境調整済み国内総生産、一般にグリーンGDP と呼ばれている)が提案されている。しかし、環境の便益は評価されておらず、したがって国連の計算はこれを含まないという欠陥がある。また、地球生物圏の生態系全体が行うサービスを価格評価した大胆な例もある(R.Costanza, et al.(NATURE)、1997 年)。

ここで引用されているCostanza et al.やその後の国連が提案したミレニアム生態系評価では、生態系サービスの評価が中核を占めています。
 以上のことから、海洋基本計画に生態系サービスという概念を用いることは、けっして不可能ではないと思いますし、むしろ必要なこととして提案すべきだと思います。