Date: Thu, 12 Jun 2014 12:08:59 +0900
J-BR-netのみなさま (以下、松田個人見解です)
10日よりスウェーデンにて第26回MAB国際調整理事会(MAB-ICC)の審議が行われています。【】
エコパークの新規・拡充登録については11日(水)14:30-17:30(日本時間21:30-24:30)に審議が行われる予定と申しましたが、他国案件で審議が大幅に遅れ、志賀高原の拡充登録は12日10時(日本時間17時)以後に持ち越されました。(志賀高原のせいではありません。また、南アルプスと只見の審査は滞りなく承認されました)
【】今までの審査について、正確な内容は国内委員会から説明があるでしょうが、以下に松田個人の理解を申します。
審査は、先月公表されたInternational Advisory Committee for Biosphere Reservesの勧告に基づき、MAB−ICCの場では、これに若干の修正が加わった文書が配布され、さらに口頭で各国から勧告内容にどのように対応したかの内容が報告され、それに基づいて順番に審査が行われています。日本は現在理事国(ICCメンバー)ですが、非理事国もObserverとして参加し、発言もそれなりに認められています。
上記資料では、各地の申請に対し"be approved", "be approved pending" "be deferred" "be rejected"という4種類の勧告があります。たとえば日本からは、南アと志賀高原が"be approved"、只見が"be approved pending"とあります。しかし、これはあくまで審査委員会の勧告であり、ICCの場では各国の対応も含めて審査されます。
只見については、上記サイトにあるように緩衝地域をAとBに分けている点について対応が求められ、両者を統一して緩衝地域とするという対応を日本ユネスコ国内委員会から事前に返答していました。その内容が昨日事務局から説明され、そのまま承認されています。
アルジェリアからの申請は一括して注意が指摘されるなど、今回はBe deferredが多くなっています。これが、今回審議が大幅に遅れた最大の原因と言えるでしょう。
只見の場合、上記サイトに改善案が2種類提示され、それに基づいて対応すると回答したので、口頭では承認してよいと提案され、その通りになりました。しかし、審査委員会の指摘事項に応えきれていない案件については、今回承認されていません。
各国からの申請も、それぞれ地元の期待を背負っています。理事国だけでなく、非理事国も理事国に支援を頼み、必死で承認してもらうように発言します。中には、登録勧告が出た案件も自分の案件と同様に登録基準を満たしていないので二重基準ではないかという異議もでました。議論の場で、前議長や元議長から異論が出る案件もありました。スライドで地図を出して議論する案件もありました。
多くの場合、Be approved pendingやbe deferredが、ICCの場で登録承認される例が多いです。しかし、2年前の韓国の非武装地帯の申請では登録勧告がICCの場で延期となりました。その時は非理事国の北朝鮮の意見も尊重されました(審査委員会の反省材料と思います)。MAB-ICCサイトに明記されているように、審査委員会の勧告通りになるとは限りません。
さらに、今回の個人的感想ですが、その場の異論によって決定が覆された例がほとんどありません(上記サイトの勧告と違う例は多々あります。つまり、審査委員会の勧告とその後ICCまでの地元と国内委員会の対応、事務局と国内委員会のやりとりが重要です)。丁寧に説得している。そのため、大幅に時間がとられました。
【】審査委員会の専門的見地からの勧告は尊重すべきであり、その条件を満たした案件だけを登録すべきです。それでこそ、価値が高まります。
世界遺産でも似たような状況、即ち勧告が条約会議で覆されて承認されることが増えていると言います。それは、登録の価値を下げるものです。
活動実態がないBRは、いくら自然の保全状況が良好でも、BR世界ネットワークから除外されます。それで、過去に登録され、移行地域のないBRは現在見直されているわけです。英国では国内委員会自らが取り下げた案件もあります。
登録基準が厳格化されることで、地元にさらに過度の負担がかかると心配されるかもしれませんが、上記の只見の例などは、大きな問題ではないと思います。その背景などは、改めて口頭で議論させてください。
今回、改めて、登録決定の発表手順について考えさせられました。地元の皆さんの期待と心配がある中で、ICCの現場で何をすべきか、国内委員会としての方針はありましたが、予定の日本時間24:30を過ぎても報告できなかったようで、翌朝の朝刊に間に合うかどうかも含め、個人的にももっと深く事前に考えておくべきだったと反省しています。大変ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
審議が予定通りに進まないということ自体が、ユネスコエコパーク登録の価値を物語っていると考えていただければ幸いです。去年までより今後のほうが一層厳しくなっているとすれば、それは新たな価値が生まれてくると言えるでしょう。というわけで、登録決定の瞬間を写真に撮るなど、浮かれている状況ではありませんでした。それもごめんなさい。
【】関係者の皆様、深夜までご心配をおかけしました。