知床世界遺産候補地問題についての返答

Date: Tue, 14 Jun 2005 14:35:10 +0900
【IUCNがさらなる保護策の可能性を検討するよう要求しているという質問について】現在札幌出張中の松田裕之です。IUCN評価書については7月10日のユネスコ総会までは非公表ということであり、科学委員としてコメントを差し控えさせていただいています。
 ただし、5月31日の環境省林野庁合同記者発表の内容については承知しています。その場で発表された下記の勧告の内容ですが、①は環境省も想定していたことだと思います。②の調査団については異例のことと聞いていますが、新たな要求とは言えません。
③については、科学委員会自身も素案は早急に作るとしています。海域保全の強化はIUCNの2月の書簡でも指摘されていたことであり、これに答えるために海域管理計画を作るのです。④については、河川WorkingGroupの判断を待ちます。⑤については評価書が非公表なのでコメントできません。
 いずれにしても、海域管理計画は、あくまで漁業者の合意の下に行うことが必要条件になるでしょう。大切なのは、自然保護と持続可能な漁業の両立を図ることであり、それが可能であると私は常々主張しています。

  1. 遺産地域の海域部分の境界線を海岸線1kmから3kmに拡張するための手続が法的に確定した段階で、地図等を世界遺産センターに送付すること。
  2. 登録後2年以内に、海域管理計画の履行の進捗状況と遺産地域の海洋資源保全効果について評価するための調査団を招くこと。
  3. 2008年までに完成させる海域管理計画の策定を急ぐこと。その中では海域保全の強化方策と海域部分の拡張の可能性を明らかにすること。
  4. サケ科魚類へのダムによる影響とその対策に関する戦略を明らかにしたサケ科魚類管理計画を策定すること。
  5. 評価書に示されたその他の課題(観光客の管理や科学的調査などを含む)についても対応すること。

Date: Tue, 14 Jun 2005 20:15:49 +0900
今千歳空港です。最終便で帰京します。漁業者が反発や心配をすることはあるでしょうが、IUCNの勧告が「それ【=自主規制】以上の強化」を求めているとは思っていません。論理的に、自主規制と強制は意思決定の形態の差であり、保護レベルの度合いの差を表す概念ではありません。知事との公文書(文面をおもちでしたら、教えてください)がある限り、自主規制以外の保護強化はありえないと思っています。