JSTワークショップ経済学と生態学の融合報告

Date: Tue, 27 Dec 2005 16:14:22 +0900
 昨年のワークショップの際には、最初、生態学者と経済学者の議論にすれ違いが見られた。しかし、それは互いの問題意識の相違というよりは、学問体系の相違に基づくものであり、互いの問題意識がどこにあるのかを誤解していたため、議論のすれ違いが起きたものと思われる。今回のワークショップでは、相互に交流可能であることが十分に認識されたと思う。
 第1の誤解は価値評価にかかわるものである。経済学者からは「経済学者が環境の価値を(金銭的に)評価し、保全の優先順位を結論付けるのに対して、生態学者はその評価を疑問視し、すべてを守るように主張する傾向がある」というような意見が聞かれた。他方、生態学者からは「経済学者は金銭だけで価値評価を試みるが、生態学者は非経済的な価値も評価したいと考えている」という意見があった。これらは互いに相手の学問体系と研究者の研究動機を誤解しているといえるだろう。
 第2の誤解は互いの専門性に関するものである。経済学者からは「自然の価値を生態学者に科学的に評価してほしいが、それをやるのはむしろ工学者である」という指摘があり、生態学者からは「自然保護の活動の上では運動の経済的現実性が重要で、そのために経済学者に期待しているが、実際には起業家やイノベーションに係る人がその役割を果たす」という指摘があった。これは、互いの専門性を誤解している証拠である。経済学者は自然保護運動の経営の専門家ではない。生態学者は生態系過程を解明するがその価値を評価するのが仕事ではない。
(一部抜粋)