生態学者が委員になってできること

Date: Tue, 15 Jun 1999 20:26:21 +0900
○○様 c○○様
 親身のお返事ありがとうございました。
 アセス側と評価側*1の人間が重複することは、日本では当たり前のことのようですね。万博アセスでは、手法検討委員会の報告書も、専門家だけで書いたように見えながら、その実役人とコンサルが下書きを書き、専門家の意見を取り入れられるかどうか、会議の途中で休憩を入れて省庁間討議が始まるなど、茶番も良いところと思いました(彼らの名も、報告書の著者に入れるべきです)。

【環境影響評価などで科学者として提言する際の】信条とは、「決して立場によって主張を変えない」ということであり、首尾一貫した立場を主張することでした。当初そのことにより、ずいぶんと煙たがられましたが、決して裏切らないと言う意味での強い評価を受けていると考えています。

 それは、○○さんも同じでしょう。
 私も、ミナミマグロシロナガスクジラより絶滅の恐れの高い生物に認定したIUCNの決定に異を唱え、増えすぎたエゾシカの保護管理計画を立てて○○から時機尚早と批判され、保護団体とは対立することも多いです。始めは○○のある人からおまえは何を考えているなどと罵られましたが、いまはそれなりに付き合えています。

オオタカの営巣可能性に関しても、【事業者は準備書段階で】十分検討していたと考えるべき

 やはりそう思いますか。ボーリング調査をそのためにやったとしたら、なかなか鋭い裏アセスだったと思います(3つがい目とは予想外だと思いますが)。そうでなければ、あのボーリング調査を強行するのは面子だけの問題で、ほとんど意味がありません。反対運動の種をばらまいただけです。道路予定地の周辺での営巣を阻もうとしていたと考えるのが自然です。
 【以前、テレビ番組で】○○元環境庁長官【】は「藤前はやめて良かった。後で万博もやるんですから」と3度くらい言っていました。
「○○省は今まで手痛い失敗を経験していないので、大変遅れている」という認識は、目から鱗が落ちました。彼らがすべて計算づくではないとすると、理解できることがいくつかあります。
 個人的には、無論望むところです【が、環境影響評価会などの委員に】二度と私には声がかからないと期待しています。私は、むしろがんばる生態学者が続出すると期待しています。私たちがjeconetや生態学会自由集会などで万博のことを取り上げていけば、委員になったら何ができて、どうすべきかがかなり知られると思います。
 【環境団体】には、「【生態学者が】委員になったら何ができるか」という手引書を作って欲しいと思っています。私は最初、準備書と方法書の違いもわからず、守秘義務がどこまであるかも知らず(今でもわかっていませんが、役人に聞けばよいと知りました)、本当に手探りの状態でした。

*1:環境影響評価書を書く人と、それを評価する検討会委員