知床世界遺産科学委員会クマWGで、利用者の問題行動に起因する危険事例が2024年度に70件発生したことが報告されました。2022年4月、改正自然公園法が施行され、知床国立公園で、ヒグマにエサを与えたり、著しく接近したりする行為は違法となりました。昨年度、北海道や東北地方でクマの人身事故が相次ぎ、知床でも多くの問題熊が捕獲されました。
「人間とクマが互いを警戒し、避けあう」ことが共存の秘訣です。人を恐れない問題熊は、人と生ごみと農作物と家畜を襲うウェンカムイ(アイヌ語で「悪い神」)になります。観光客に慣れたクマは、住民の脅威になります。
昨年問題個体を多数捕獲したことで、問題個体は総個体数とともに減ったようです。けれども、残念ながら、危険事例は減るどころか、増え続けていることが報告されました。このままでは、問題個体が生み出され続けます。人とクマの共存の根幹が崩れかねない事態です。
法律では50m以内の接近を違反行為としていますが、それは摘発される基準であって、それ以遠なら人馴れしないという趣旨ではありません。ハラスメントギリギリの行為なら良いとは言えないのと同じです。本来、人馴れを避けるという趣旨を理解いただけるなら、この法律は不要でした。
米国イエローストーンでは「ゴミがクマを殺す」という標語があります。ゴミをあさるようになったクマは駆除せざるを得ないという意味です。「カメラがクマを殺す」、つまり、近距離でカメラ撮影を繰り返されたクマが斜里市街地に侵入して駆除されています。人馴れしたクマは住民の脅威です。人身被害、家畜や農作物被害に繋がりかねません。
ご理解いただけるよう願うばかりです。