愛知万博をめぐる大昔の書簡

日時 : 1999年9月18日 10:30
 通産省万博アセス評価委員の松田裕之です
 ○○さんからの電子メールを学生に見せていただきました。それによりますと、愛知県は「万博はアセス法の対象外だから(○○さんが主張される)施行令に拘束されず、(青少年公園=新たな関係市町村を加えても)アセスを実施計画書からやりなおさなくてよい」と主張されているようです。【中略】
 ○○さんの紹介された愛知県の答弁が字句どおりなら、結果的に、アセス法の趣旨を先取りして定めた通達は、アセス法に関係する施行令に従う必要がないと述べていることになります。これは、理に適わないことです。
 今回の万博の問題点は山ほどありますが、特に

  1. 新住の評価書が、アドバイザー会議やオオタカ検討会における合意形成の努力なしに出されていること。
  2. オオタカ営巣・過去のオオタカ調査をめぐって、準備書の重大な不備が指摘され、会場計画が変更されたにもかかわらず、新住の評価書素案ではオオタカの影響予測、評価の改善がとうてい専門家の納得できるものではないこと。
  3. 会場計画変更がアセス法の趣旨に照らせばアセスの再実施に該当すると思われるにもかかわらず、その作業を放棄し、愛知県は、「環境影響評価を適切に行う」という閣議了解の実体とされていた「環境影響評価法の趣旨を踏まえ」た環境影響評価をおこなうことを放棄したこと。
  4. せっかくオオタカ営巣という新たな事態を踏まえて会場計画を改め、アセスを踏まえた会場計画の変更という先駆例になり得たにもかかわらず、その実体は「会場拡大」であり、造成面積をほとんど減らさない偽の保全措置であったこと。
  5. 市民、生態学者の側からは万博開催の対案が出されていたにもかかわらず、アセス準備書段階で複数の会場計画を評価せず、突然会場を増やし、徹頭徹尾アセスメントを軽視した事業であること
  6. 今回のアセスはアセス法の先例となる内外で注目されたアセスにもかかわらず、その模範となるどころか、「○○よりひどい」杜撰なものになり、今後の日本の環境政策全般に悪影響を及ぼすこと
  7. 結果として、万博が標榜していた海上の森の自然が、無残に切り刻まれることが問題だと思います。

 市民の対案に多少なりとも妥協して(した振りをして)会場計画を改めれば、大いに「胸を張って」万博ができたはずなのに、その作業を完全に怠った万博アセスは、もはや全面的にやり直すしかありません。
 造成面積を減らすなど、万博の改良への期待は大幅に望み薄になりました。しかし、万博自身ができなくなる可能性は、むしろ増えているかもしれません。100%勝てるとは全く言えませんが、いまが絶好のチャンスだと思いますし、これほどの横暴を許しては行けないと思います。【】