海洋保護区は万能か? イワシの需要は増やせるか?

Date: Sun, 28 May 2006 15:11:04 +0900
○○さん
 MPA(海洋保護区)がうまく機能するのは、京都のズワイガニのように構造物を沈めて底引き網ができないようにするとか(もちろん、他の漁業は可能です。全部を監視する必要はない)、定置網を撤去するとか(抜け駆けすればすぐばれる)いうものでしょう。漁獲努力がMPAの外縁に集まって失敗するというのはよくわからない。これ文献ありますか? Hannessonはそんなことをいうのですか。漁業が管理の失敗の歴史だといいながら、いまだに努力量だけでうまくいくと思っているのか。
 これまた、日本では入力規制のほうが成功すると思っている人が多いと思います(UNCLOS国連海洋法条約とは矛盾しますが)。 確かに、今後はGPSが常設されるでしょうから、漁船の軌跡は技術的に追えるでしょうし、どこで獲ったかも報告義務を負わせることができるでしょう。獲った場所を偽ることは難しく、それを監視するほうが楽にできるようになると思います。

【anchovyやsardineは豊漁期には獲りきれないほど増える(あれを全部食用にできたら、食糧問題にかなり貢献できると思います)。という私の主張に対して】

これは漁業経営の側面から無理な話だと考えます。まず、第一に漁業特有の不可逆的投資の問題です。他産業と異なり、漁業への投資は回収することが難しく、臨機応変に追加投資をして規模を拡大させたり、縮小させたりすることはできません。・・・では、最初からそうした豊漁の時期に合わせた大規模な漁獲能力、プロセッシング施設を備えることで対処すればいいとすると、今度は十分な漁獲のない年には収入なしに設備の維持のために莫大な固定費用を費やすことになります。第二の問題はマーケットの価格弾力性と需要量(または市場規模)です。いくら冷凍技術が発達しても食品は鮮度が問題です。2年、3年前の魚介類を売ることはできません。例え、大量に捕れたとしても、消費されなければ意味はありません。
Anchovy、sardineは食用としてのマーケットには限りがあります。
唯一できることは、現在、水産庁でも薦めているようですがmulti purpose fisheing vesselの開発です。水産庁ではここまでは考えていないようですが、私はこれを多魚種のポートフォリオ化だと考えています。より多様な魚種に対して適用可能な漁船を造ることによって資源量変動の大きい魚種と、資源量の安定した魚種、それぞれの魚種に対する努力投下量を調節し、結果として、長期的には安定した収入を確保することを目指せます。

 マイワシ、マサバ、カタクチイワシなどは、同じまき網で取れます。網目を変えねばならないが、その費用は需要があればたいした問題ではないでしょう。要するに、いつの時代でも、まき網で大量に取る魚種があるならば、私は十分可能だと思います。今はカタクチイワシを獲っていないので漁船が遊んでいるように見えますが、カタクチイワシを獲ればよいのです。問題は市場です。これは、研究も含めた努力次第で何とかなると思います。今まで、その努力をしていなかった。