12.2 函館汐首岬風発予定地検討会

Date: Sun, 3 Dec 2006 10:50:33 +0900 (JST)
委員各位、 関係各位
 本日は、戸井委員会が皆さんの誠意と熱意によって成り立ったこと、たいへん意義のあることだと思っています。開催に尽力され、誠意を尽くされた皆様に感謝します。
 委員長が指摘されたように、抽選前の段階でこのような委員会が開かれたことは稀有なことであり、事業者が発言されたように、本来はこのような合意形成は個別案件ではなく、風発協会と中央環境団体が風発建設の条件を合意すべきことであり、単独の事業者が開催すべき案件とは私も思いません。しかし、全体としての協定が結ばれていない以上、このような検討委員会が開かれたことは、たいへんよかったと思います。地元野鳥の会から発言されたように、野鳥の会の提案を受けて開催にこぎつけたのですから、事業者としてもたいへんな決断だったと思います。
 野鳥の会檜山支部の報告には感心しました。あれだけのデータを取ることは、大変なことだったと思います。趣意書にあるように、個体群に対する影響を評価するにあたり、1個体でも衝突することが大きな影響とは私には思えませんが、回避すべき影響については、優先順位がよくわかったと思います。
 もし抽選に当たった暁には、今後とも議論を続けるということが確認されたと思います。
 私個人として、唯一つ残念だったのは、私が笑いながら議論していたこと自体を傍聴席から非難されたことです。我々生態学者は、二項対立を避け、共通の科学的認識の下で論点をつめ、社会的な価値判断を仰ぐことが大切だと常々言ってきました。私としては、できるだけ険悪な雰囲気を避けるよう努めたことを、本来発言が禁止されている傍聴席から非難されたことはたいへん残念です。
 意見が違うのですから、腹が立つことは誰にでもあります。私が追及する側ならば、努めて論理的に、具体的な難題を次々に突きつけます。委員の皆さんはそのように努められていたと思います。喧嘩腰になることが、自然を守ることにはなりません。
 会議中に、風発自身の社会的意義(CO2排出削減効果への実際の貢献度)に関する評価もあわせて行われるべきだという意見がありました。私も同感です。そのためには、生態学者だけでなく、エネルギー問題の専門家も必要です。新エネルギーの重要性を評価するのは、鳥学者・生態学者ではありません。
 一つ付け加えるならば、風発によって大手電力会社が他の発電量を明確に下げないのは、彼らの都合だと思います。政府は新エネルギーを推進しているのに、大手電力会社は必ずしもそれに積極的ではないとも聞いています。また、地方ごとに大手電力会社を決める現在のやり方自体を見直す動きもあると聞いています。私個人は、この点で、大手電力会社の利益が自然保護の利益と合致するとは思っていませんが、まず、上記の私見の妥当性も含めて、エネルギー問題の専門家も含めた上で判断すべきだろうと思います。
 その上で我々がこの委員会で判断すべきことは、我々委員の価値観に沿って、風発が妥当かどうかを検証することではありません。事業として社会的に妥当かどうかを判断するうえで、生態学的知見から検討することだと思います。その際に、費用対効果を含めて評価する(すなわち、発電による社会的便益と鳥衝突リスクを総合的に判断する)ことが合意されたと思います。当然のことながら、種の保存法など、鳥衝突対策を採る上ではさまざまな法的根拠があります。海外事例も含めたさまざまな研究成果も踏まえるべきだと思います。この文脈に沿って検討すれば、価値観の違いとか、主観の違いなどというもの別れにはならないでしょう。
 この委員会を開催するに当たり、さまざまな行き違いが生じかけました。しかし、それらを抑えて、開催にこぎつけた双方の関係者の姿勢は、今後の自然保護問題の合意形成において、よき先例になると思います。今後ともよろしくお願いします。