生物多様性戦略におけるunderuseの問題

Date: Fri, 1 Jun 2007 09:33:04 +0900
 私は第二の危機(アンダーユース)を削除しろという意見ではありません。第一の危機(過剰利用による生物多様性喪失)に比べて、大写しにされることが多いと危惧しています。里山が多くの絶滅危惧種を維持してきたことも事実ですが、中山間地を守れというだけで、放棄せざるを得ない中山間地をどうするか、国土計画と連動した多様性国家戦略が見当たらないことが心配なのです。
 復元生態学の基本原則はPassive restorationであり、放置してそれなりに回復する自然を、無理に、そして半端な形で維持することはないというのが私の主張です。【】少なくともその流域の人々にとって生態系サービスが一時的に劣化することは確かだと思います。ただ、数十年程度の長期的視点で評価すれば、より的を絞った里山維持政策ができるのではないかと思っています。【】半端な維持活動が行われることは心配です。
 現在でも、一時的に国内の木材単価が上がったためか、一部の森林で皆抜が行われているとも聞いています。より長期的で国際的な戦略をもった、農林水産業政策や環境政策、食糧、人口、外交政策、(後で述べるように)国土計画と連動した生物多様性国家戦略が必要だと思います。
 【】そのためには、中山間地の防災の考え方自体の変革が必要だと思っています。一言で言えば、ゼロリスクは無理だということです。現在では暴論と聞こえるかもしれませんし、私自身が具体的に検討してはいませんが、すべての過疎地を道路や鉄路で結ぶ必要はなく、水路と空路を確保する(もちろん、最寄の港からは道路が必要です)ほうが生態系への負荷が小さい場所が多々あるのではないかと思います。ただし、今までと同じ高水準の安全と便利さを確保することはできないでしょう。それでも、都市から中山間地に人口が移動する可能性があると思います。
 手前味噌ですが、わが横浜国大には防災分野と環境生態リスク分野が伝統的にあり、共同で安心・安全の科学研究教育センターを設置しています。今後の中山間地の生態系保全を論じるには、夏原さんがご指摘のとおり防災は避けて通れないし、そのキーワードは、リスク管理であると思っています。
 つまり、多様性国家戦略は国土計画、人口・食料政策との連動が必要なのです。
 日本は、古くから人口が多かったにも係らず、途上国並みの豊かな生物多様性に恵まれてきました(私のある講義では留学生が英語で母国の環境政策を紹介していただいてますが、バングラディシュは森林率17%、在来植物5000種だそうです。分類は日本と同列にはできないかもしれませんが)。正念場は、人口が減り始めたこれからで【】しょう。