3/17生態学会大会「MAB」シンポジウムのお知らせ

Date 2010年03月07日(日) 16:52:45
 生物多様性条約COP10まであと半年と迫りました。3.17生態学会での表記シンポジウムへの参加を呼びかけます。
 気候変動枠組み条約(COP15)では先進国と途上国の対立が浮き彫りになりました。私は、COP10もその二の舞になると心配しています。
 COP10は「生物多様性の喪失速度を顕著に減らす」という2010年目標を検証し、2020年目標と2050年目標を議論する節目の会議です。先日、世界全体はおろか、議長国である日本国内でさえ、上記目標は達成できなかったという環境省生物多様性総合評価検討委員会の答申がでました。それが、2020年までに世界中で「生物多様性の喪失を止める」という"Ambitious"な目標が掲げられようとしています。途上国は非現実的(で敷居が高すぎる)と反発しています。
 私がこの会議に期待することは、空虚なお喋りではありません。今後の生物多様性保全に向けた、具体的で建設的な取組みを進めることです。
 一つは、Ecological Footprint(の改良版)を指標とし、それを下げる取組みを各国で始めることです。これはCO2排出削減にも通じながら、すでに多くの省エネルギー政策を実施した日本のような国でも、すべきことがたくさん提案できます。
 もう一つが、この投書の本題である「利用と保全の調和を図る」取組みです。日本政府は、生物多様性国家戦略で第二の危機として持続可能な人間活動の縮小の問題を挙げ、SATOYAMAイニシアティヴ(SI)により日本の里山の取組みを世界に紹介しようとしています。しかし、ユネスコにはThe Man and The Biosphere(MAB)プログラムという人間と生態系の調和を図る取組みがすでにあります。表記シンポジウムの場で紹介するように、世界のMAB関係者、COP10関係者も、この両者の連携を歓迎する書簡を私に送ってきています。この連携を果たすには、MABを所轄する文科省とSIを進める環境省および我々生態学者の協力が欠かせません。私はこの連携が、利用か保護か、現実的目標か野心的目標かという国際舞台の不毛な二項対立を超える解になると期待しています。
 表記シンポジウムでは、ユネスコテヘラン支局からHan氏と今秋EAFES大会を開催する韓国の洪教授を招き、文科省環境省のコメントもいただきながら、日本では知名度の低いMABの取組みを紹介するとともに、このシンポジウムの場で、上記の連携を模索するつもりです。
 皆さんの参加を歓迎します。
 なおMABシンポジウムの参加には生態学会大会への参加(有料)が必要です。

 「利用と保全の調和を図る国際制度としてのユネスコMAB(人間と生物圏)計画:日本の環境保全戦略への活用
2010年3月17日 9:00-12:00 場所 東京大学駒場 (詳細未定)
9:00 イントロダクション: MABと生物圏保存地域, 松田裕之・酒井暁子(横浜国大)
9:20 里山の新たな保全制度としてのMAB-BRの可能性, 大澤雅彦(自然保護協会)
9:50 Development of the MAB Programme in Asia, Han Qunli (UNESCO Teheran)
10:20 Living harmoniously with man and nature systems in Shinan Dadohae Biosphere Reserve, Sun-Kee Hong(洪善基、韓国 国立木浦大学島嶼文化研究所)
10:50 南アルプスの自然とMAB-BR, 増沢武弘(静岡大) 
11:20 コメント:屋久島におけるMAB-BRと世界自然遺産との関係 羽井佐幸宏(環境省
11:35 コメント:MAB計画とESD(持続発展教育)  浅井孝司(文部科学省
11:50 まとめ 鈴木邦雄(横浜国大学長・日本MAB分科会主査)
12:00 終了