今回の福島第一原発での被曝量

Date: Sat, 9 Jul 2011 06:29:37 +0900
 ダイオキシンもそうでしたが、今回の原発でも、科学者が自分の政治的主張を繰り返す場面が多すぎますね。
 原発を全部止めるのはよいが、それをいきなりやれば、本当に停電は起きないのか、おきないとしても工場が操業自粛して日本経済に与える影響がどの程度か、普通は考えるでしょう。その上で、それを選択するかどうかは社会が決めること。そのために復興資金が減るかもしれません。放射線の情報を出さないといいますが、社会が判断するときの情報としては、ほかにも大事なものがたくさんあります。
 他方で、放射線の影響を過剰に語る。あたかもこの世の終わりが来るように、絶対に許容できないかのように論じる。震災自身の被害に比べて、原発の被害はずっと小さなものだと、私は思います。隕石が衝突しても、近くの火山が爆発しても事故を起こさない原発はないでしょう。
 生態学に予算がないというが、研究予算は申請して自分で勝ち取るもので、本来は行政にもらうものではない。今の優先度から見て、生態影響調査よりも災害復興のほうにお金が流れるのは当然でしょう。
 また、実際には、震災対策に特化した研究公募があります。些細ながら、わが水産資源・海域環境研究会もその公募中です。ほかにもあるでしょう。これらに応募すればよい。
 震災に直面して、自分の無力を感じました。何が起きても自分の専門の重要性を押し売りするよりも、余計なことをしない、役に立つなら喜んでというのが本来の研究者の姿だと思います。暇になったら、好きな研究に打ち込めます。
 でも、ひどいのは政治ですね。浜岡原発を止めるといったときの首相は評価しましたが、そう思う人の中にも、今度のストレステストはひどいと思う人が大多数でしょう。今頃言うことではないですね。

Date: Sun, 10 Jul 2011 10:14:38 +0900
 勉強会、ありがとうございました。

  • 被曝による遺伝的影響は明らかではない(チェルノブイリで動物に奇形が出たのは長く被曝し続けているからで、遺伝的影響ではない)
  • チェルノブイリ内部被曝が多かったのは、汚染された牛乳を飲み続けていたから(気づかずに飲んでいたものの被曝量は、残留しているセシウムから、飲んだときのヨウ素を逆算している)。
  • 広島長崎の原爆による被曝のほとんどは爆発時の直接照射によるもので、「黒い雨」などの降下物による被曝は桁違いに低い

 特にこれら3点は参考になりました。
 内部被曝外部被曝波に多いと問題にする人がいますが、実際に摂取しているものから計算して言っているのではなく、チェルノブイリの知見なのですね。福島では最初の1週間はともかく、あとはずっと少ないはずです。どうもおかしいと思っていました。
 広島長崎では牛乳からの内部被曝はなく、チェルノブイリでは最初気づかずに飲み続けたということでしょう。もちろん、今回も今までに知られていない高い汚染源があれば、被曝量は上がるでしょうが、あまり考えられません。
 多くの野生動物にとって、被曝の負の効果よりも、避難地域で増える効果のほうがずっと大きいと思います。そこまではチェルノブイリでも知られています。避難地域の中に保存すべき植物などがあれば、人間がいなくなることで問題が生じるかもしれません(具体的には聞いていません)。他方、今回の日本で違うところは、それが周辺地区の新たな獣害問題を起こす恐れがあります。今後有害駆除をしても、避難地域に鳥獣が逃げ込む可能性もあります。これだけは、生態学者でなければ気づきにくいこととして、訴えておいたほうがよいでしょう。