漁業法改正について

Date: Wed, 28 Nov 2018 07:17:01 +0900
【】勝川俊雄さんは【Yahooニュースに】意見を出しています。私は,勝川さんの意見に賛成です。【水産資源・漁業 の管理の】あり方検討会が明記したように,漁業権者に説明責任を課す(有効性と適切性を評価する)ことはよいが,IQ制度に沿岸漁業への配慮を明記するのがFAO標準だし,少なくともすぐに公選制を任命制に変える必要はない(非民主化)。
 アクアネット8月号の特集【は,】全体としては守旧派の愚痴になっていますが,加瀬さんが書いたように,共同漁業権自体には(養殖場を切り取られる以外は)影響ないと思っているようだが,この法改正は漁協と区画漁業権を切り離す。参入企業にとっては有利だろうが,公選制度も失われ,沿岸漁業の衰退を招くでしょう。
 もともと,漁業法改正運動自民党【】議員などだが,法案を実際に不眠不休で作ったのは水産庁の役人たち。この法案は,魂【議員】と頭【水産庁】という水と油の合作物。しかし,自民党議員も,後ろから弾を撃つわけにはいかない。野党に修正動議を出してもらいたいところだが,その気配はないですね。
 作文した水産庁は,クロマグロの捕獲枠を追認するIQ制度にしてしまっている。クロマグロ捕獲枠の混乱が日本の漁業全体に及ぶことになる。
 それでも,今までよりはましだと思うかもしれません。沖合に限ってはそうかもしれませんが,これでは欧米よりも沿岸漁業にとってははるかに不利な状況になるでしょう。
 松宮義晴さんが生きていたらどうしただろうか。賛否や注文の付け方はわからないが,喜々として,この問題に全力投入したでしょう。

Date: Wed, 28 Nov 2018 16:20:55 +0900
 一気に公選制を変えるのでなく,まずは沿岸漁業への配慮を明記したIQ導入,有効性と適正性の評価(そのうえで漁協メンバーになったうえでの区画漁業権の企業参入の促進)だけを明記し,調整委員の選び方については,たとえば5年後に見直すという附帯決議を上げるという方法が良いと私は思いました。任命制に変えたら,もう公選制には戻らないでしょう。
Date: Thu, 29 Nov 2018 13:38:09 +0900
【アクアネット】8月号の漁業法特集,参考にさせていただきました。特に田口さんの日本の漁業法の成り立ち,加瀬さんの区画漁業権と漁協の切り離しの問題点,濱本さんの今回の法改正における全漁連の対応は大いに参考になりました。(11月号も拝見)
 ただし,全体としては法改正に反対一色に見えます【】。これらの点は,私とは意見が異なります。拙文を書いてみました【CoFRAME】。濱本さんの主張を引用させていただきました。

漁業法改正問題。あまりに拙速ではないか

Date: Wed, 21 Nov 2018 07:37:31 +0900
漁業法改正案について,現時点で私が感じる論点をまとめて【つつあります】

  1. .あまりに拙速ではないかということ。70年ぶりの改革なのだから,2年くらい検討してもよいのではないか。この法律の作文を誰がしたのか。どうやら,【規制改革を指示した学者】すらあまり文案作成に関与していないようです。内閣法制局はどうなのか。水産庁の資源管理課は,【】IQ制度がよいと思っていない。そのような人に作らせても,うまく機能しないことは明白でしょう。
  2. .ふつう,法律というのは,いろいろ将来起こることを想定して対処を考えるものだと思うが,現在起きているクロマグロ問題にも対応できないように見えること。(沖合に)IQを入れるのはよいが,配分方法がこれでは過去の実績の割合に応じると読めます。沿岸に配慮するとどこに書いてあるのか。ITQにできないのはよいとしても,融通もできないようでは,現在クロマグロで検討している政策すらも入っていないように見えます。
  3. .現行法の「民主化」を捨て去ってしまっているように見える。現在の漁業調整委員公選制は機能しているのでしょうか。そこも知りたいです。

Date: Wed, 21 Nov 2018 16:17:26 +0900
 漁業法改正案,かなり突貫工事で作ったみたいですね。(水産庁資源管理課の残業は過労死状態)

  1. しかし,あまりにも拙速で,「抵抗勢力」(例えば野党からは非民主的等)だけでなく,「改革派」からも不満の声(水産庁に作られてしまった)が私には聞こえています。
  2. 皆さんすぐにできないと楽観しているかもしれませんが,そうとは限りません。【】
  3. 法の目的に持続可能性を明記すること,沖合漁業にIQを導入すること,知事が漁場管理計画を定め,漁業権を持つ業者に説明責任を課すことは,大変よいことだと私は思いました。
  4. 他方,IQの割り当てを過去の実績の比例配分にする(これでは,クロマグロの沿岸と同じことが起きる),【】現在の沿岸クロマグロ漁業の悲劇がさらに繰り返される構図になっているように思いました。(松田のBlog参照)
  5. 漁業調整委員会の公選制をなくす法案のようですが,もともと機能しているのでしょうか。水産政策審議会で沿岸漁民が少ないのは,似たような公選制があるのでしょうか。

 よろしくお願いします。

11/8東大行事

Emerging opportunities for marine sustainability 結構大勢(30人超),しかも重要人物に参加いただきました。もっと日本人のPew海洋保全フェローを増やそうという声が。漁業法改革の流れが一気に加速した昨今ですが,私が2007年にPewフェローになった時の課題箱の写真の通り,「知床世界遺産の海域管理のCo-management」です。基調講演者のSmailaさんが漁業補償金の問題について講演したので,日本のOFCFの取り組みを知っているかと尋ねました。ご存知のようで,よく調べていると感心しました。

11/4 G1 フォーラムでの意見

2018年11月6日 17:55
 既存の漁民も納得できる改革を【】求めてきたつもりです。

  1. クロマグロの捕獲枠について質問させていただきましたが,既に捕獲枠は昨年から実施され,大きな社会問題になっています。その解決法策について,返答はいささか抽象的であったと思います。実際に政治を実行される立場での具体的な提案を望んでいます(半年前の拙稿【】。これが最善というわけでなく,今できる策として申しました)。
  2. 区画漁業権については,今ある養殖場を大企業に置き換えるわけではなく,新たに増やすための方策という説明が登壇者からあったと思います。この説明はいささか疑問と意見申しました。大規模効率化を図ることも良しとする意見はあるかもしれませんが,事実を誠実に説明して,政策を成すのが良いと私は思います。
  3. 海洋プラスチック汚染について,1950年に魚の生物体量を超えるというがどの程度確かな話なのか。そもそも魚の量も正確にはわかっていない。登壇者からは健康リスクへの言及はなかったが【】登壇者はどう考えているのか。ダイオキシンの二の前になりかねないと危惧している。

 彼らは規制改革や大規模化が漁業の再興につながると信じているが,小規模漁業者を小規模のまま守ろうとは全く思っていないようだ。
2018年11月5日 7:09
 GHG排出ゼロを目指すというが,別にゼロにこだわる必要はないし,だから化石燃料を全く使わなくなるという言説も私は疑問に思っています。液体燃料は便利であり,農作物から作るのは現時点では無駄。食料の副産物として使える技術が普及するならそれでもよいが,それならば,やはりプラスチックは製造されるでしょう。それをごみとして廃棄するのは減らすべきでしょうが,ESGの標的にするほど深刻なものなのかは疑問です。
 もちろん,ESGは正義でなく,国際条約でもなく,投資行為ですから,私ごときが警戒しても進む可能性はあります。私に言わせれば,捕鯨反対も,国際条約の合意を待つより,ESGの方がはるかに簡単です(私は持続可能な捕鯨が可能という見解)。
 逆にいえば,誰が石炭産業をESGの標的にしたのか,それができたのかに興味があります。国際条約ともIUCN決議とも別の力学がそこにあるのでしょう。

11/8 東京大学行事案内「持続可能な漁業の新たな可能性」

Date: Thu, 1 Nov 2018 21:30:52 +0000
Jeconet, Wildlifeの皆様
 横浜国大の松田裕之です。
 11月8日午後,東大本郷中島ホールにて,Pew海洋保全フェロー事業は東大八木研究室と連携して下記行事を開催します。
 松田が2007年に日本人最初のPew海洋保全フェローを拝命して以来,日本人のフェローも3名になりました。開催趣旨にあるように,日本政府自体も含め,持続可能な漁業への改革のさまざまな動きがあります。基調講演者のSmaila教授は2008年にPewフェローとなった経済学者です。皆さんの参加を歓迎します。末尾サイトよりお申し込みください。

Pew Fellows Program in Marine Conservation

Emerging opportunities for marine sustainability
The University of Tokyo, Nakashima Hall
Thursday, 8 November 2018
13:30-15:30

Keynote address:
Ussif Rashid Sumaila, 2008 Pew marine fellow and 2017 Volvo Environment Prize laureate, professor, the University of British Columbia, Canada

Featuring presentations by:
Nobuyuki Yagi, Professor, The University of Tokyo, Graduate School of Agricultural and Life Sciences
Gaku Ishimura, Associate Professor, Iwate University
Isao Sakaguchi, 2017 Pew Marine Fellow, Professor, Gakushuin University
Hiroyuki Matsuda, 2007 Pew Marine Fellow, Professor, Yokohama National University
Nathan Fedrizzi, Senior Associate, The Pew Charitable Trusts

The Pew Fellows Program in Marine Conservation invites you to a symposium on marine sustainability, organized in partnership with the Laboratory of Global Fisheries, Graduate School of Agricultural and Life Sciences, the University of Tokyo.

Changes in fisheries management can create new opportunities for improving the sustainable use of marine resources. This symposium will explore emerging ideas and opportunities for advancing marine conservation in the context of proposed fisheries management measures, including community-based cooperative systems, increased reliance on output controls, and the introduction of individual quotas. Through a series of short presentations by Pew marine fellows and other experts, attendees will learn about options for engaging civil society to advance sustainable fisheries and other types of ocean conservation

参加申込先
https://www.cvent.com/c/express/d38b9bcd-a0da-4673-accf-3f159fcdd95a

For more information, please contact Nathan Fedrizzi, Senior Associate, Pew Marine Fellows Program (nfedrizzi@pewtrusts.org)

For more information on the Pew Fellowship in Marine Conservation, go to: https://www.pewtrusts.org/en/projects/marine-fellows

クロマグロの大群 まき網は産卵場で操業できればマグロを一網打尽にできる?

2018年7月16日
ISC【北太平洋まぐろ類国際科学委員会】最終日に【開催地】韓国でも放映されたクロマグロNHK番組。iSC参加の水産研の科学者が解説。産卵場で密集するクロマグロがまき網でとりやすいことも示唆される映像だった
NHKニュース「クロマグロ大群撮影に成功」】

人と自然の相互作用の価値を問い直す

吉田正人・筑波大学世界遺産専攻吉田ゼミ著「世界遺産を問い直す」(2018年,山と渓谷社
Date: Sat, 1 Sep 2018 23:29:26 +0900
 久しぶりに一気に読破できる本に出会った。読みやすい。世界遺産は世界と日本で極めてよく知られた制度だが,危機に瀕しているという(184頁)。特に自然遺産において,人と自然の相互作用の価値が忘れられてしまったからだという。
 本書は日本の自然遺産を紹介する章構成にみえるが,主題は自然保護区における人と自然の関係の価値を取り戻すことにある。もともと世界遺産はそれを重視していたという。世界遺産の起源はユネスコ文化遺産,IUCN(国際自然保護連合)の自然遺産,米国の世界遺産トラスト運動であり(20頁),これらを一つの条約にまとめる動きが,イエローストーン国立公園100周年の1972年にストックホルムの国連人間環境会議を機に世界遺産条約を生んだという。
 自然遺産の評価基準は,1977年の作業指針の段階では (ii)「進行中の地質学的,生物学的過程,人と自然の相互関係」であったものが,1992年には「地質学的」が基準(i)に移動し(25頁),「人と自然の相互関係」が文化遺産の「文化的景観」の基準に統一されたという(27頁)。IUCNの1971年の文書には自然遺産の定義として「人によって改変された地域も含む」とあり,二次的自然を視野に入れていたという(28頁)。
 結局,文化遺産と自然遺産を目指す別々の動きがあり,それを一つの制度にまとめたものであって,それぞれイコモス(国際記念物遺跡会議)とIUCNが分かれて審査する別の制度になってしまった。自然遺産における文化的価値,文化遺産における自然の価値にはあえて触れない(31頁)。複合遺産は自然と文化の「合わせ技」でなく別々に審査され,両方の基準を独立に満たす場合にのみ登録される制度となった。2013年の世界遺産委員会でカナダのピマチョイン・アキ遺産の先住民がそれに異を唱え,自然と文化の関係性に関する評価方法を検討することが決議されたという(4頁)。
 一つ思いついたことは,文化遺産の基準(vi)「顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)」を使えば,「合わせ技」の複合遺産が可能ではないかと思う(13頁)。この基準を自然遺産の基準と合わせれば複合遺産になるかもしれない。
 本書は,人と自然の相互作用の価値を世界遺産で評価することの正統性を説き,日本の自然遺産(2-6章)と富士山と紀伊山地(7章)という文化遺産を例に具体的にその価値を述べ,最後に世界遺産の変革を論じている(8章)。しかし,結局のところ,世界遺産条約の条文を変えない限り,世界自然遺産だけで人と自然の関係の価値を評価し,守るには限界があるようにも思えた。世界遺産の管理計画は登録時の評価基準を守ることに追われ,登録地の外側のことはなかなか論じられない(31頁)。
 将来,奄美琉球世界遺産が登録された後の日本の世界自然遺産の取り組みの可能性について,屋久島の海域への拡大,小笠原を再申請して評価基準(iix)「地質・地形」を満たす遺産(まだ日本にない)の追加,そして富士山を複合遺産にすることの3つを説いている(191頁)。さらに,世界自然遺産地域の外側に緩衝,移行地域を設ける,ユネスコ「人間と生物圏」(MAB)計画が取り組むユネスコエコパークとの二重登録に言及している(194頁)。白神では実際に環白神ユネスコエコパーク構想を提案したという(53頁)。MAB計画に係わる者として,改めて意を強くしたが,実際に世界遺産とMAB計画を日本においてどのように連動させるか,ユネスコ国内委員会やMAB計画委員会が果たす具体的な行動提起を考えないといけない。環境省は,奄美琉球を登録させた後は,ユネスコ【世界】ジオパークエコパークの新規登録等との連携を検討していると聞いている。
吉田正人氏はIUCN日本委員会元会長UNESCO Chair on Nature-Culture Linkages in Heritage Conservationであり,世界遺産IUCN勧告にもかかわる専門家です。