定年退職と再雇用の挨拶

私事で恐縮ですが、2023年3月末をもちまして定年を迎え横浜国立大学大学院を退職することとなりました。 20年間横浜国大にお世話になりました。Global COE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」、日本生態学会長ユネスコチェア「生物圏保存地域を活用した持続可能な社会のための教育」を初め、生態リスク学の普及発展に努める機会をいただきました。私を導き、支えていただいた多くの皆様に心から感謝します。新年度からは、横浜国立大学学長特任補佐・総合学術高等研究院として、ユネスコチェアと生物圏科学研究群(仮称)の活動に取り組みます。5月13日に最終講義を行います。皆様の来聴をお待ち申し上げます。

2023年3月末日 松田裕之

海洋政策学会有志の次期生物多様性国家戦略に関する意見書 (風力発電)

 

次期生物多様性国家戦略に関する意見書

2022 年 5 月 31 日

日本海洋政策学会有志 PDF

 

・2050 年のカーボンニュートラル社会の達成にむけ、海域の積極的な利用が必要である。沿岸域のアマモ場・藻場・マングローブ林などによる二酸化炭素の吸収固定(ブルーカーボン)は、生物多様性保全の観点からも価値が高い。洋上風力発電も、計画立案段階からの戦略的環境評価(SEA)および事後的科学モニタリングを行うことにより、多様なベネフィットの持続的創出に寄与できる。(P3)

 

・海洋は陸上に比べて風況が好適であるため、自然再生エネルギーを活用する有望な手段として、洋上風力発電が今後一層重要となる(木下 2019)。バードストライクや海流の変化など、環境・生態系への影響は不可避であるが、気候変動対策としての大きな可能性を考慮し、生態系への影響を可能な限り少なくしたうえで、洋上風力発電を展開することができるよう、施策を策定する必要がある。特に、洋上風力発電事業が行われる海域や施設は、炭素吸収を目的とした大規模な海藻養殖や海洋性レクリエーション・教育等への活用等、多様なベネフィットの持続的創出が可能であり、また、禁漁区あるいは保護区の併設も検討できる。様々な利害関係の調整と組合せには上述の MSP が有効であるが、さらに計画立案段階から戦略的環境評価(SEA)を行うことも重要である(中田 2022)。発電設備の設置後も科学的モニタリングと評価が行われ、海洋生物多様性へ与えるプラスの影響が明らかになれば、OECM と位置付け得る可能性にも留意すべきである。(P8)

 

(以上)

ゼニガタアザラシの被害対策は成功しているか?

ゼニガタアザラシ被害対策の記事。科学委員会資料で出た被害額の表をグラフにして、対策が成功していると読めます。褒めてくれたことはありがたいが、我々はそこまで楽観していません。 

科学委員会で示された図は被害割合の推移です。漁獲量が激減して、漁民は困っている。2016年17年も漁獲量が減り、被害が減らず、被害割合が増えた。今回は被害割合増加は避けられたが、管理計画初期から被害割合が大きく改善しているとはいいがたい。これではまだ成功とは言えません。 アザラシを捕獲して、2割減らす目標を立てた。その間に被害対策手法を開発し、漁業とアザラシの共存の道を探るつもりでした。そろそろ2割減少に近づいているが、まだ被害対策が確立していません。絶滅リスクを避けるうえで、2割以上減らしてはいけないとは限りませんが、いつまでも減らし続けるわけにはいきません。共存の道はまだこれからです。



11/11 技術士会水産部会11月講演会基調講演,

人と自然の「新たな」関係:その源は水産資源管理にある(予定): 技術士会水産部会11月講演会基調講演, 機械振興会館

講演要旨案:環境問題の鍵は持続可能性、経済的割引率、共有地の悲劇である。これらはみな水産学の教科書に半世紀前から述べられてきた。近年、手つかずの自然を残すという単純な自然保護観から、人が自然の中にあり、自然と関わりながら共存するという現実を直視した環境政策が広く認められつつある。同時に、水産は環境問題全般とより一層関わることで、初めて存在感を維持できる。このような2020年代での水産学と水産業の未来を考える。

世界標準となったLiving in harmony with nature

11/21YNUユネスコチェアEBRoSSキックオフ行事に参加いただいた方、ありがとうございました。

PS モントリオールで開催されたCBD/COP15が終わりました。2010年名古屋で開催されたCBD/COP10でも文科省MABとESDの副行事*を企画いただき、SATOYAMAイニシアチブの決議+が採択され、その中にMABとの連携も書き込まれました。当時はLiving in harmony with natureは日本主導の主張であり、MAB計画にも即した考えでしたが、COP15ではUNEPのNew Deal for Natureなど、21日講演でMiguel教授が紹介したDasgupta報告でも、CBD全体の自然観になりつつあると思います(それを標榜した1994年環境基本計画の原点は、21日の渡邉綱男様の講演では屋久島憲章とのことでした)。CBD/COP15でもKunming-Montreal Global biodiversity frameworkのSection F 28にLiving in harmony with natureが書き込まれました。我々のユネスコチェアEBRoSSも、その時流を受けて活動したいと存じます。



横浜市 青葉区北西部のバス路線変更に伴う自転車専用レーン廃止について

横浜市 青葉区北西部でバス路線を維持していくための取組について

(HTML PDF) アンケート(2023/1/31〆切)

 私見を申します。

アンケートや説明文を読んでもよくわからなかったのですが、おそらく3つの問題点があります。

  1. 赤字路線を縮小したい
  2. 運転士を減らしたい
  3. そのために、榎が丘交差点~青葉台小学校西側交差点の区間自転車専用レーンがなくなる(PDF)

この自転車専用レーン廃止は今回の資料に見当たりませんが、町内会関係の説明にありました(PDF)。個人的には、これが最大の問題です。バス停付近の歩道を狭くせざるを得ないのはわかりますが、そのために、この区間全体で自転車を車道横を走らせるというのは、時代に逆行すると思います。

 この方針を撤回したわけではなく、維持したまま、説明だけをしないというのでは、このアンケートが公正なものとは感じられません。バス会社はともかく、横浜市の姿勢が問われます。

赤字路線を減らすことはやむを得ないと思います。無理をすれば大幅削減になるから「バス路線を維持していくための取り組み」と表現している(実際には維持でなく縮小ですが)。

それだけでは理解できないことは、連節バスの導入です。客が増えても運転士を増やせないなら、連節バスは理解できますが、客も減っている。これは客の減少以外に運転士を減らしたい(その二つは連動するのでしょうが)ということでしょう。

それならば、日体大ー緑山を25-30便に増やすという意図が良くわかりません。これは大幅増便になるように見えます。その必要が果たしてあるのか。

以上、いくつか、疑問が残ります。