海洋政策学会有志の次期生物多様性国家戦略に関する意見書 (風力発電)

 

次期生物多様性国家戦略に関する意見書

2022 年 5 月 31 日

日本海洋政策学会有志 PDF

 

・2050 年のカーボンニュートラル社会の達成にむけ、海域の積極的な利用が必要である。沿岸域のアマモ場・藻場・マングローブ林などによる二酸化炭素の吸収固定(ブルーカーボン)は、生物多様性保全の観点からも価値が高い。洋上風力発電も、計画立案段階からの戦略的環境評価(SEA)および事後的科学モニタリングを行うことにより、多様なベネフィットの持続的創出に寄与できる。(P3)

 

・海洋は陸上に比べて風況が好適であるため、自然再生エネルギーを活用する有望な手段として、洋上風力発電が今後一層重要となる(木下 2019)。バードストライクや海流の変化など、環境・生態系への影響は不可避であるが、気候変動対策としての大きな可能性を考慮し、生態系への影響を可能な限り少なくしたうえで、洋上風力発電を展開することができるよう、施策を策定する必要がある。特に、洋上風力発電事業が行われる海域や施設は、炭素吸収を目的とした大規模な海藻養殖や海洋性レクリエーション・教育等への活用等、多様なベネフィットの持続的創出が可能であり、また、禁漁区あるいは保護区の併設も検討できる。様々な利害関係の調整と組合せには上述の MSP が有効であるが、さらに計画立案段階から戦略的環境評価(SEA)を行うことも重要である(中田 2022)。発電設備の設置後も科学的モニタリングと評価が行われ、海洋生物多様性へ与えるプラスの影響が明らかになれば、OECM と位置付け得る可能性にも留意すべきである。(P8)

 

(以上)