東大海洋研シンポジウム「低水準期にある浮魚資源の管理」 (2)

Date: Sat, 26 Nov 2005 15:15:52 +1200
皆様

シンポで私が驚いたことが2つあります。
(1)研究者の見解があまりにも違っていたこと、
(2)【漁業者】の「マイワシも増加期に転じたら漁獲量規制(操業規制)をしてもいい」 という○○さんの指摘に対して

 (2)は大歓迎です。1990年代にマイワシの減少期にも私は管理は必要だと思いますが、管理すれば資源が回復するという目標を掲げていたとすれば(これはABC規則の[第2期」の話で、実際には2000年くらいからでしょうか)、たしかに、漁業者には奇異に映ったかもしれません。減少期から低水準期にいつ移ったかは細かく見ないといけませんが、管理目標としては資源の減少幅を減らす(今より低い資源量を定めてそれを死守する)という選択肢は現在のABC規則でもまだないと思います。一般論としてこれが必要であることは、我々も提示する責任があると思っています。
 思えば、マサバのConstant Escapement*1などの漁獲量や資源量の分析を私が発表したのは1992年で、当時の業界は誰もサバの管理など言ってくれませんでしたが、時代は変わったと思います。少なくとも増加期には管理が必要と認めていただいているのですから。
 (1)は、私は櫻本さんほど違っていたとは思いません。二つの極端(産卵親魚量と加入量が(同じ環境条件なら)比例するという意見と、親魚量に関わらず加入量が一定とする意見)のどちらに近いかといえば意見は分かれますが、皆その中間だと思います。 それは密度効果を部分的に入れると考えがちですが、私は単に密度効果の関数形で、その中庸を採ろうとは、今は考えていません。渡邊良朗さんのアイデアですが、もっと別のモデルができると思っています。
 いずれにしても、低水準期で、親魚量に関わらず加入量が一定(管理の必要性がない)と主張されていた方は、私はあの場にいらしたことは認めますが、ごく少数だったと思います。論理的には、この極論は破綻しているでしょう。(他方の完全比例という極論も、それよりは自明ではないが、やはり支持されていないでしょう)
【】上記の理由により、この【魚の親魚量に関係なく新規加入があるという】主張は論理的に破綻していると思います。私は、総合討論でそれを議論していたつもりです。だいたい結論は出たと思います。ただ、どの程度管理効果があるかは、【同じ環境条件ならば親魚量と加入量がほぼ比例すると仮定した】我々の計算ほどではないという批判はありえるでしょう。

*1:魚の資源量は毎年変動するが、変動する再生産資源の持続可能な漁獲量を最大にする際には漁獲後の取り残し量(種籾に相当する)を一定に保つこの方針になる