自分でも信じていない数理モデルでは他人は説得できない

Date: Mon, 17 Jul 2006 09:58:59 +0900
○○さん 7.16にも指摘したことですが、詳細は検討できていませんが、以下は頷けます。

(1)過去の情報にもとづく個体群動態パラメータの推定の不確実性と(2)将来予測における、将来の加入や漁獲の不確実性の二つがあるが、実際には(1)の不確実性を無視して(2)だけを考慮して評価している。そのことを明示しておくほうがよい。【文章は変更しています】

 しかし、このような仮定で不確実性を無視していると述べて済ましているだけでは、到底、漁業者を説得することは不可能だと思います。それなら、担当者が直感で結論を述べるほうが、まだましでしょう。その直感と計算が合う場合と合わない場合があるでしょうが、合う場合には根拠として適当でも、直感に合わない(あるいはあうかどうかわからない)結論を答申するのは危険なだけです。

 統計学では、根拠がない限り、できるだけ単純なモデルが推奨されます。これは最節約原理とか「オッカムの剃刀」とか呼ばれます。しかし、不確実性が存在することは十分に根拠があることです。それを考慮した際に実際のデータの情報量より複雑なモデルになってしまうとしても、それは仕方のないことで、それを無視することはできません。誤差以外の「傾向」は根拠がない限り考慮することは統計学的にできませんが、誤差は大きめに考慮すべきです。

Date: Mon, 17 Jul 2006 15:56:00 +0900
 【資源評価を】ころころ変える ことを前提にするのではなく、変えないような評価をすることを考えるべきです。
 そのためには、不確実性をある程度十分に事前に考慮しなくてはいけません。そうでなければ、役に立ちません。 今回の議論をうかがっていると、それが不十分だったと思わざるを得ません。 そうだとすれば、もっと頑健な予測に絞って物を言うほうがよいのではないでしょうか。
 どこまで考慮すればどこまでのことが言えるかは、評価者の勘としかいえないでしょう。少なくとも、自分でも、来年なにを言うかわからないと思っているとすれば、うまく行かないでしょう。
 自分が1年後、3年後、10年後に何を言っているか、その可能性の範囲を常に想定しながら発言すべきです。難しい数式よりも、それができていれば、リスク管理はある程度できると私は思っています。
 たとえば、1992年と96年級群に対するマサバ未成魚の多獲が資源回復を妨げたというような指摘は、まだ生きていると思います。しかし、そのとき保護すれば資源は5倍だ10倍になったという計算自体が、維持されるとは限りません。もう少し大局的に見て確信を持てることを言うことが重要だと思います。
 資源評価は毎年検証にかかっています。それはよいことです。だからこそ、不確実性をもう少し考慮しなければいけないと思います。