昨年度末の海域WGでの松田の主な発言

平成17年度第4回 海域ワーキンググループ会合
日 時 : 平成18年2月23日 9:15〜
松田委員  大変ありがとうございました。
 かなり直前になって意見を追加しまして、大変申しわけございません。
 ちょっと前に申し上げた意見の中にも書いたのですけれども、最も肝心なところがないというのが私の率直な意見です。最も肝心なところというのは、実際に資源の状態がどうなったときに何をするのかというのが管理計画であって、管理計画のために必要なことは、調査をするということです。【中略】モニタリングが必要だということです。その調査して、それを評価する、評価をした上で管理する、これが管理計画の3点セットです。ここに書かれていることは調査だけです。評価もなければ管理もない。ですから、これは海域管理計画ではなくて、海域調査計画であると私は思います。
 そういう意味では、盛り込んでいただけないのは大変がっかりしておりますが、例えば、自主管理計画でこんなふうにやられているということをちゃんと引用して、それは適正と認められると我々がお墨つきを与えるのなら、それはそれでいいと思います。ただし、自主管理計画でやっているから我々が評価すべきことではないとか、我々が言うべきことではないと言ったら、何も評価になりませんし、それではIUCNの方も納得しないでしょうし、これ自身は管理計画にならない。我々自身も責任を持って、ここは管理されているということは、これだけではできませんというのが最大の問題点です。【中略】
 それから、同じことがふ化放流事業にも言えます。私は、ふ化放流事業が悪いと言っているわけではありません。これは、持続的な漁業が行われているかどうかの指標としては重要でありますし、それを行うためにふ化放流事業をするという選択をするならば、それはそれでいいと思います。ただし、ふ化放流事業をやってサケ・マスが増えているから海の生態系の健全性が保たれているというのは、これは生態学的に言って成り立たないと思います。
 ですから、そういうところをちゃんと分けて、先ほど資料5に紹介していただきましたけれども、我々がやる目的を陸と海の生態系の相互作用の保全、持続的漁業をやる、地域の生活権、それから知床・千島生態系の保全というような形で分けて、それぞれの事業がどの目的を達成するためにやっているというところを明確にしないと、人工ふ化放流事業をやっているから健全な海の生態系が守られているというふうに我々が見なされるような管理計画あるいは調査計画をつくってしまうと、これは、IUCNどころか、世界じゅうの非難を浴びるので、それはやめた方がいいと思います。
 以上です。
○松田 明確に入れていけばいいとしか言いようがないのですけれども、例えば、5ページの一番下から6ページにかけてのスケトウダラを拝見しますと、ここには漁獲可能量の設定による管理措置の実施としか書いていないわけです。その漁獲可能量の設定の仕方自身も、水産総合研究センターのホームページを見ても載っておりますけれども、それ自身を我々が吟味して、確かにこれをやっていればうまくいくだろうということを我々がこの場で判断する必要があると思います。
○松田 【管理目標は】必要だと思います。そうでないと、これは管理計画にならないです。つまり、漁獲可能量の今の決め方は、科学的に見れば、それでいけばどの程度資源は回復する、あるいは、間違ってもこんなふうに資源は悪化しないという目標になっているということを我々は科学的に解釈することはできますから、そういうことを書き込んでいくことはできるわけですよ。
 でも、管理計画はよそで決めているからと言うから、我々は調査するだけだということになる。【中略】でも、私はそうではなくて、ここでは現在行われていることが実際にやっていれば、こんなに悪いことは起きない。だから、健全な生態系は守られるし、持続可能漁業は守られるということを科学者の方が分析して、それを証明する指標として、例えばこの指標種に関しては資源はこういう状態で維持されるだろうということを我々が評価基準として書くことができるはずだし、それをやらねばいけない。
 何度も申し上げていますが、そういうことです。そうでなければ、これは管理計画とは言えません。だって、悪くなったらどうすると何も書いてないのですからね。
○松田 ですから、何度も申し上げているように、今建っている家の設計図を書くのが我々の仕事だと思っているのです。でも、今どんな家が建っているのかがわからなくては設計図も書けない。設計図が書けないということは、すなわち管理計画が立てられない。今漁業でやられていることを我々が知って、それをここに書き下さない限りは科学委員会としての仕事にはならない。
○松田 本当に全部数値目標があるのですか。
 私は何度も言っていますけれども、指標種をいっぱい挙げていますね。私はもっと絞り込むべきだと言っているのは、そういうことなのですよ。本当に全部、そんなに数値目標が既に挙がっているのですか。私はないと思っていますよ。
○松田 【中略】そうすることによって、単に国内でのTACという枠組みだけではなくて、例えば何らかの形で、ここの下の方に私が書いたことは、日ロ生態系共同管理に向けた何らかの交流を図っていくということくらいまでは実際に書けるのではないかと私は思っています。
 むしろ、その方が、世界遺産の管理を通じて、より日ロとの連携を図ったようなことをやるという国際的な世論をつくることができるのではないかと私は思っています。
 ただ、この部分は、もちろん皆さんの考え方次第では、知床・千島という言い方はやめて、海洋生態系の保全というふうに変えてもいいかもしれません。
 その具体的な取り組みとして、こういうふうに政府と書けるかどうかわかりませんが、少なくとも研究者間の交流は既にやっていることだと思いますし、それを管理計画の中に書いて、その上でロシア漁業との実態を調査するということは、一方的にロシアが悪いことをしているからそれを調査しろというような書き方よりもはるかに建設的に協力を引き出せる可能性があると私は思っています。
 以上です。