Date: Mon, 18 Sep 2006 15:09:28 +0900
○○様 c○○様
絶滅リスクの説明についてですが、 Δ(1/T)は絶滅危惧種しか評価できないと指摘されていますので、一言だけ申します。
私は、そうは思っていません。
たとえば、愛知万博でも中池見でも、実際の絶滅危惧種のTの減少はせいぜい10^-6くらいのたいへん低い「リスクの上昇」です。 それならばT=無限大(あるいは100万年)の普通種のTを1万年に縮めるような負荷であれば、10^-4になりますから、はるかに大きな負荷がかかります。 私は、ミナミマグロ(インドマグロ)をCR(絶滅危惧種の最高ランク)に掲載することに反対しましたが、過去の乱獲時のTは100年程度と見積もられます。その場合には、Δ(1/T)は10^-2であり、これほどの負荷を一つの事業(あるいは産業でもよいです)でかけるものは、それほどありません。
リスクの上昇は確率で評価すべきです。Δ(1/T)は次元が確率(1/year)ですが、他の指標はそうではありません。そして、1000個体以上の場合、通常のPVAではTが10^20年などというきわめて大きなものになります(これは過小評価です。過去100年の環境変動だけでは遠い先の絶滅リスクは評価できません)。これでは、種全体でなく、個体群レベルでも、比較に耐えるものにはなりません。絶滅待ち時間が10^20年から10^10年に減るものが、T=10年からT=1年に減るより大きなリスクとは私は思いません。そんなに遠い先の絶滅をなぜ心配しなくてはいけないのかというのが率直な感想です。しかし、確率ならば、10^-6程度でも、考慮すべきことといえるでしょう。
ただし、上記の指標は、あくまで絶滅を評価エンドポイントにしたものであり、生態系機能の維持などは評価できません。それは別の評価方法が必要だと思います。