「規制改革会議 中間取りまとめ」の反論への意見

Date: Thu, 28 Aug 2008 11:49:43 +0900
【政府の「規制改革会議 中間取りまとめ」が下記サイトなどにある。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/0702/item080702_06.pdf
水産分野で、この文書に対する桜本和美さんの批判が8月25日付の水産経済新聞に寄せられた。以下はその批判を読んでの意見である】
 記事原稿、ざっと速読しました。賛成できるところとできないところがあります。
 前半部分はおおむね賛成です。規制改革のデータは(まだ元を見ていない段階ですが)、仰るとおりならば、専門家のピアレビューを経た形跡がありませんね。【】わざと極端なことを言い、科学的信頼性を下げる「へま」をやっている。極端な失敗例だけを挙げていままでの漁業管理の取組みを全否定することには、私も反対です。
 まず、専門家(少なくとも桜本さんのような意見を言う方)のピアレビューを経た形跡がないと言う点は重要でしょう。
 後半のABCに社会経済要因を加えてTACを決めること、ABC(資源回復計画に基づく)は自然科学だけでは決められないと言う点は、水産総研センターの資源評価外部評価会でも何度も指摘された点であり、仰るとおりです。しかし、これが新聞記事だとすると、私は賛成できません。低水準になったあとも明らかに資源を減らし続けるようなTACが設定されていること、ABCを0(混獲を除く)と設定した年にもTACで漁業を続けたことは、国連海洋法条約の趣旨に反すると思います。そのような指摘をせずに上記の主張だけをすれば、どうTACを決めてもよいという印象を読者に与えるものとなるでしょう。【】この点は賛成できません。
 ABCを複数のシナリオに基づいて設定すると言うのは当然であり、IPCCも同じ考えです(昨日、IPCCは政策中立を目指しているのに、報道が最も保守的なシナリオに基づく政策をIPCCが提言しているように報道するので困ると言う専門家の話を聞きました)。しかし、私の考えは少し違います。多くの国際管理と同じく、まず基本目的、次に数値目標を社会が合意すべきです。これは京都議定書と同じです。IPCCはそのような合意のある社会に対する科学的提案を行っているのであって、基本合意のない相手に複数のシナリオを提供しているのではないと思います。
 また、【】TACの期中改定は慎重にすべきです。これがいい加減だと非常に困ります。現時点では、私は期中改訂を推奨することには反対です(すでにありますから、禁止とは言いません)。改訂を行う根拠が不明確である。トドの採捕枠で懲りました。
 また、指摘された二つのABC改定案だけでは、日本の漁業を救うことはできないと思います。その意味では、包括的な対案が必要です。 水産総研センターの中間報告はそれを目指すものですが、これについても、より多くの議論が必要でしょう。

Date: Thu, 28 Aug 2008 16:14:07 +0900
 【】IQまたはITQを導入したほうがよいものは多々あると思います。全魚種にいれろとはいいませんが、入れるべきものは早く入れたほうがよいでしょう。TAC魚種が7種と言うのは諸外国(NZ、ロシア)に比べてたいへん少ないと思います。いずれ、日本は排他的に利用する資格がないといわれかねません。
 【資源回復目標の不在について、】少なくとも温暖化では、2020年までの数値目標(京都議定書)、2050年までに半減と言う全体目標(洞爺湖サミット)が合意されています。そのようは目標は社会が決めることで、自然科学的に決められないと言うのはご指摘のとおりです。しかし、それと、社会が決めなくてよいということは違います。私の理解では、海洋法条約により、沿岸国はTACを定める義務があるはずです。そのTACを決める算定根拠(つまり、資源管理・回復目標)を決めないと言うのは、好ましい状況ではありません。それなら、後からまずい状況になったときに何とでも言い訳ができます。
 秋刀魚については、私の理解では、生産調整するのは自由ですが、ABCABCの場合だけ科学的に問題というのはなぜか?】生物学的乱獲を避けるのが海洋法条約の趣旨であり、当然ながら、ABCTACの場合には乱獲を導きません。前者のほうが問題であることは明らかです。
 後者の場合、あるいはTAC>漁獲量の場合、外国漁船を排除すべきでないという意見を聞いたことがあります。それなら、ABC>TACも問題です。条約上はどうなのでしょうか?
 期中改訂がうまく機能した実例を誰も知らないとすれば、期中改訂のルールや条件が詰められているとは思いません。たいへん危険であると思います。【】問題は、そのような期中改定の条件が明記されているかと言うことです。奨励する場合には、是非その点もご検討ください。

Date: Fri, 29 Aug 2008 04:21:53 +0900

水産分野の規制改革会議の答申への意見照会結果
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2008/0702/item080702_014.pdf

 情報ありがとうございます。どちらが勝つか、という問題にしてよいなら静観しますが、はたしてそれでよいのでしょうか?
 今のままでは、水産資源も減るし、社会的にも乗り切れないと思っているやる気のある漁業者は多いと思います。ただ、若い人が多いので、地元の漁協でも発言できない場合も多いと感じます。抵抗勢力と化していては、今の漁業制度の良い面も含めて丸ごと失うでしょう。実際の漁獲枠や漁期などの決め方は漁業者の自主性が大切だと思いますが、制度改革で漁業者との合意を気にしすぎていては、社会との合意が得られないと思います。