クロマグロ問題について、NHKラジオジャパンでの意見

Date: Wed, 18 Nov 2009 00:33:00 +0900
クロマグロ問題では、ICCATの結論が出て、1段落着いたと思います。NHK ラジオジャパンからインタビューを受け、以下のように答えたので、お知らせします。11.16の午後2時からの番組で放送されると聞きました。
 報道によれば、予想通り、米国等は「削減幅が足りない」と述べているそうです。安い値段で流通を維持することができるかという報道が日本では目立ちますが、値段は上がってよいというのが私の意見です。そのように発言しました。さて、CITESでどのような議論になるかが、次の問題です。

Q1:大西洋のクロマグロは、どのくらい減少しているのか?
A1:Bluefin Tunaは太平洋やインド洋でも獲れるが、大西洋のマグロの減少は特に著しい。先日のICCATの科学者委員会の報告では、産卵可能な親魚は、漁業が本格化する前の15%以下にまで減少しているとしている。
特に問題なのが、90年代後半からヨーロッパの地中海を中心に広がった「畜養」と呼ばれる養殖。これは若いマグロを獲って、半年から2年ほど掛けて生簀で太らせて出荷する方法で、殆どが日本向けに「トロ」と呼ばれる脂身を作って輸出している。日本では寿司の材料としてマグロは人気が高く、高い値段で取引されるので、新しい外貨獲得ビジネスとしてトルコ、リビア、モロッコなど、元々はマグロの輸出国ではなかった国が続々と参入し、生産量が増えている。

Q2:「畜養」にはどんな問題点があるのか?
A2:最大の問題は、生簀に入れる若いマグロをどれだけ獲ったか把握できていないこと。
どれだけ生簀に入れて、どれくらい生き残っているかは企業秘密の側面があり、詳しく報告されていない。同じ漁獲量でも、子供を獲れば大人を獲るよりも資源に与える影響は大きい。畜養と言う技術が開発されたのに、資源管理の制度がそれに追いついていない。産卵前の段階で獲ってしまうことは、次の世代への影響が大きいので急減に繋がったのでは。

Q3:これまでICCATは、対策を採って来なかったのか?
A3:これまでやってきたのは、資源量を減らさないことだけ。乱獲、過少申告などへの厳しい罰則等も無く、漁獲規制の管理も各国任せで、国際的な監視システムになっていなかった。ICCATのオブザーバーによる監視や不正な漁船を市場から締め出す等の対策も採られて来たが、実際に流通している量が申告された漁獲量より遥かに多いと言う状態が報告された。

Q4:今回ICCATは、思い切った漁獲枠の削減と新たな規制の方針を打ち出しました
A4:今回の決定にはいくつかの国や生態学者から異論も出るだろう。この取り決めを守ることにも失敗したら、来年春のワシントン条約の会議では附属書掲載が勧告され、国際取引が禁止されるだろう。将来は、クジラと同様、禁漁に追い込まれてしまう可能性がある。
しかし、一番考えなくてはいけないのは大量のマグロを消費する側の責任。大西洋マグロの約8割は日本が輸入している。日本の消費者は、「畜養」の拡大でマグロ資源が減り続けているのに、いまだに安い値段でマグロを食べ続けて来た。今後は、たとえ値段が数倍になっても構わないから、限られた範囲でマグロを獲って行くことを日本の消費者が支持することが大切。