海洋研シンポジウムで議論されたABC決定規則の問題点

Date: Sun, 13 Nov 2005 12:22:52 +1200
皆さん
【海洋研シンポジウムでは研究者と漁業者というより、研究者間での認識の相違が大きかったという指摘に対して】なるほど、ありがとうございます。用いる前提によって大幅にABC(生物学的許容漁獲量)が変わるというのは、ABCの決め方に問題があるのだと思います。○○さんも、それを感じているからこそ、MSY(最大持続漁獲量)に基づくABCの算定に懐疑的で、現状をベースにしたABC決定規則を推奨しているのではないでしょうか。
 もちろん、それでも仮定次第で資源の絶対推定量【は】大きく変わると思います。しかし、増減傾向、目標資源量より今が多いか少ないかの認識が一致し、、目標水準に何年で到達するかという目標が一致すれば、ABCの値はそれほどは変わらないと私は思います。そのようなABC決定規則を○○さんも求めていると思っています。
 今でも環境がよくなればすぐにでも資源は回復するとか、今以上に減らしてもよいというかたはたしかにいました。これは全く認識が互いに違う例です。しかし、多くの方はすでにそのようには考えていないと思います。管理の必要性を説く多数の研究者に対して、これらの批判は互いに全く正反対の認識からの批判であることがわかったと思います。
 【研究者間で意見が違う状態では漁業者に信頼されることは無理という意見について】そうですね。仮定次第で大きく結果が変わるような決定規則は除いたほうがよいでしょう。
 【「同じ環境ならば親魚量が多いほうが加入も多い」という認識があるかといえば、】○○さんと○○さんはそうではないと思っていましたが、今届いた○○さんのメールを拝見すると特に異論はないようにも思います。
 同じ海況で、資源量と加入量が完全に比例すると思っている人もまたいないと思います。その辺を今後どう将来予測、リスク評価に生かしていくかは、いま思案中です。マサバで言えば、1992年と1996年が高いという環境指標を示すことができるなら、そちらの指標のほうがむしろ適切かもしれません。年毎の環境指標に海域の不均一性などを考慮したモデルが必要かもしれません。
 ○○さんのメールを読んだ印象では、完全に資源量に依存しないと考える人もいないと思います。ですから、「現状で漁獲量を減らし産卵親魚をより多く残すのは全く意味が無い」と考える人はいないと思います。特に、資源がある程度多いときは別にして、少ないときには資源量が少ないほど(同じ環境条件で)加入量も(比例するかどうかは別にして)少ないと皆さん考えていると思います。
 資源量と加入量が無関係と本気で考える人がいれば、過去のデータでかなり反証できると思います。
 偶然性が強く利いていることも誰も異論は無いと思います。ですから、一通りの未来を予測して示すことに意味は無い。しかし、リスク評価(資源回復確率)を示すことは意味があると思います。そして、ABC管理を行う際に、水研のかたがたはすでにそれを取り入れつつあると思います。そのことを、理解されていないような批判がかなりあると思います。泥棒に入られるかどうかはたしかに偶然性にもよります。だから防犯や警察に意味が無いとはいえません。株でも競馬でも麻雀でも、運は大きいですが、やはり実力のある人が長期的には勝つのです。【実力(管理)が不要というのは暴論だと思います。】