水産物の輸入制限は可能か?

Date: Tue, 11 Jul 2006 22:15:48 +0900
○○様

1つ質問ですが、日本政府が進めている「責任あるマグロ漁業推進機構OPRT」は、海洋資源を管理する上で、全体的な話としてどの程度効果をあげているのでしょうか?

 それは何ともいえませんね。これは実は、自由貿易に絡んでしまうのです。先日横国大でWTO体制についてのシンポジウムを開催しました。
 農林水産省としては、食糧自給率向上は最優先課題の一つですが、そのためには単なる保護貿易では国際的に通用しません。しかし、適切な管理をしている農林水産物の輸入に制限することは可能だと思いますし、それは世界の農林水産業の環境水準を向上させることに繋がります。
 しかし、米豪などの食糧輸出国はそれに強く反対していますし、日本は欧州に比べてもはるかに軟弱です。この付けが、水産物輸入にも現れています。
 むしろ、頼りにしたいのは環境団体です。彼らも農林水産物輸入自由化を問題視しています。
 ご承知のように、日本の食糧自給率は先進国で図抜けて低い。 戦前の日本は、石油がなく、ABCDラインによって干上がり、戦争への道を歩んでしまいました。今の日本は、食糧輸入を止められたら、完全にアウトでしょう。これは何も他国に意地悪されるだけでなく、世界中の食糧需給が逼迫すれば必然的に起こることです。
 水産物の場合、たとえ現在のように輸入できる状態でも、世界中の乱獲を煽ってしまうことになります。乱獲された魚も、管理された魚も、輸入製品としては(あまり)区別が付かないのです。輸入国としての責任も去ることながら、食糧まで自由貿易固執する米豪両国の責任は重大だと思います。