学術雑誌に課税する文部科学行政改革

 これまで、私の所属する多くの学会は任意団体として活動してきました。学術団体は営利目的ではありませんから、当然、公益法人化が可能と考えておりました。
 会員向けの学術雑誌の刊行などは学会員という特定多数への利益を図る活動として公益と見なされず、公益法人化が難しい状況でした。専門家の審査員による査読をへた学術論文は、環境問題などでも重要な社会的根拠となるもので、掲載する学会誌は会員だけでなく社会的存在意義を持つものです。
 多くの学会誌は、会員の定期購読料だけでなく、学術振興会からの助成金や、発行する国際誌出版社からのロイヤリティーなどを得て成り立っています。国際的に価値ある雑誌ほど、助成金やロイヤリティーの比重が増えます。
 また、助成金は毎年審査され不採択の可能性もあるため、多くの学会が雑誌発行費用1年分程度の繰越金を持っていましたが、これも課税対象とされ、ロイヤリティーも課税対象とされそうです。これは非常に困ります。
 これらの状況について、学会誌発行を公益業務と認め、経費を非課税にするよう、学会関係者が強く働きかけていると聞いています。是非実現していただきたいものです。
 学術誌出版に支援をするどころか税金を取るという今回の日本政府の方針は、いかに危機的な国家財政にあるとはいえ、学術的には末期症状ともいえる状態です