トド管理基本方針 2024年の改正内容

トド管理基本方針は2024年に「一部改正」しました(水産庁HTML, 全文PDF)。これは結構大きな改正です。

  • 日本海側だけでなく、道東海域の採捕数の上限も定めたこと
  • 来遊個体群でなくロシア側の繁殖個体群を対象としたこと
  • PBR(潜在的生物学的間引き数)に基づく人為死亡数を根拠としたこと
  • オホーツク個体群と千島個体群に分けて、両方の繁殖個体群の保全に配慮したこと

 2005年の知床世界遺産登録時には、トドの採捕数は知床も含めて日本全体でPBRに基づき制限し、登録が認められ、2008年のユネスコ・IUCN調査団にも説明しました。トドについてもいくつか留意されましたが科学委員会の取り組みは「ほかの世界遺産のモデル」と高く評価されました(PDF)。しかし、2014年のトド管理基本方針策定以後、水産庁のトド管理は日本海に限られ、知床世界自然遺産地域周辺海域でのトド採捕数について根拠がなくなっていました。その後世界遺産委員会WHCの重ねて勧告*1を受けていました。今回、ようやく、その対策を国内で講じました。WHCがどう判断するかはもうすぐわかるでしょう。

 

参考 松田裕之 越冬個体群の個体群管理モデル:  日本生態学会福岡大会, 2022/3/15 要旨

*1:2023年9月:トドが引き続き漁獲量の減少と関連していることについて、当該国の懸念に留意する。また、個体群動態に関するデータに基づいて2024年に管理基本方針が改定され、予防原則がより考慮される予定であることにも留意する。しかしながら、トド西部亜種が2012年より「絶滅危惧種(EN)」に掲載されていることを想起すると、2024年に基本管理方針が改定されるまで、(非致死的な対策は効果が低いと考えられるため)採捕が継続されることを懸念し、持続可能な漁業とOUVの属性であるトドの保全を両立させることは、引き続き当局の重要な優先事項である。明確な個体群動態が不明な中で、トドの個体数がさらに減少する可能性があることは依然として懸念であり、委員会は当該国に対して、2024年に予定されている方針改定に情報を提供するため、個体群動態モデルの開発を早急に加速することを要請するとともに、当該国に対して再度、現在の採捕のレベルを再考、削減または廃止し、2 必要に応じてIUCN種の保存委員会に協議することを強く促すよう勧告する。方針の更新は、科学的な個体数データに基づくべきである。ー松田注:2024年の改訂まで採捕数を減らす措置は講じていません