植物学会高知大会レッドデータブックシンポジウム

たいへん有意義なシンポジウムでした。ありがとうございました。
ブログサイトhttp://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20080403で私の意見を述べていましたが、改めて意見を申します。
(1)ジェネットの少ないアサザなど:上記に述べた意見を変わりません。植物といっても生活史や特性は千差万別。すべてに共通する評価方法としてはラメットを使うべきだと思います。ただ、最後の専門家の判断で、ジェネット数が少ないことを考慮することはできたでしょう。アサザの例については、たしかに、100年後の絶滅リスクは高いかもしれませんね。
(2)シミュレーション手法の問題 としては 今回のだけでなく、前回(レッドリスト1997)で用いた減少率情報も使うほうが良いのではないかという点ですが、皆さんが仰るとおり、前回の調査は調査員の感覚的な返答に過ぎず、特に比較対象が10年前とは言えないということですので、今回の調査結果のみを使うのが妥当なのでしょう。今回初めて前回の個体数情報と比較でき、より客観的な情報といえると思います。ただし、同じ個体数規模(たとえば前回も今回も数十個体)でも、10個体から99個体なら10倍、その逆なら10分の1で、減少率分布の幅が広すぎます。宗田さんの提案にあるように、せめて、増えたか減ったか現状維持かだけでも答えていただければ、だいぶ違うと思います。
 本当は、各種ごとに、減少率分布を対数正規分布などで回帰するのがよいと思います。
 メッシュ数が少ない種の問題(エキサイゼリ)、100年後の絶滅確率が低い場合でも分布メッシュ数はわずか(な種は載せるべき)という点については、下記に述べたとおり、既に考慮されていると思います。お話を伺っても、特に判定を見直す必要はないと思いました。
 サギソウのように一部で保護されて回復している場合、その回復率をほかの地域にも当てはめたために絶滅リスクが過小評価されるという指摘がありました。しかし、逆に、他所で減り続けている減少率を保護されている地域にも適用して将来予測します。保護されている地域が十分多くない限り、指摘されたようなことにはならないでしょうし、十分多く保護されていれば、全国的な絶滅リスクはかなり低くなると思います。
 いずれにしても、日本の植物RDBは地道な調査と客観的な解析と専門家の最終判断に基づいている点で、たいへん優れたものだと思います。