ロシア語圏に行くときに、キリル文字を覚えておくと便利だということがよくわかった。(大文字で)рестранとあればレストランだ。караоке(カラオケ)まであった。半分近くの単語が英語で類推できるとは思わなかった。キエフである建物を見て「外務省か」と私がいったら、通訳が「どうしてわかりましたか」と聞いてきた。建物に大きくдиплома...(Diploma...)と書いてあったからだ。
同じように、日本語のカタカナだけ覚えているアメリカの生態学者がいた。たしかにカタカナの大半は外来語だから、かなりわかるらしい。
ただし、キリル文字では、上記のрやсやнがローマ字のR,S,Nであるなど、文字が入れ替わることに注意。小文字になるとますます甚だしい。
学生時代、私は大学ノートの表紙に「表題」を付ける習慣があった。あるときキリル文字の小文字でuguomと表紙に書いていた。これは全部ローマ字に読めるので、誰にも意味がわからないだろうと思っていたが、あるとき私の助教授がじっとノートを眺めて、私に注意した。
N先生「君、(キリル文字で)idiom(数学用語)と書きたいなら、最後のmはこう書いてはいけない。これではロシア語でtになる」
私「いえ、最後はt、つまりidiotでよいのです。これは「白痴」という意味で、ドストエフスキーの小説の題名です」
N先生はドイツ語にも堪能で、昔ドイツ滞在中に無賃乗車で捕まりそうになったとき「(ドイツ語が)分からないふりをした」と言っていた。私も第2外国語はドイツ語だが、文字通りわからない。昔の先生は語学の教養が豊かだった。私は遠く及ばない。
ウクライナでは念願の飲み物KBAC(クワス)を買って飲んだ(写真)。通訳にトルストイの小説によく出てくる「農民の飲み物」クワスはあるかと店で聞いたら選んでくれた。口に合わないかと心配したが、実においしかった。今でも自家製で作って飲んでいるらしい。今度は黒海のセバストーポリを旅してみたい。